君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第10章 trill
『答えは? 出たの?』
メモ用紙に書いた俺の問いかけに、櫻井さんが首を横に振る。
うん…、出なくて当然だと思う…
こんな俺でも、ニノと初めてセックスしたいと考えた時は、実際凄く悩みもしたし、迷いだってした。
DVDやネットで、現実を目の当たりにすればするほどに、ね…
「べ、別に君のことが嫌いになったとか、そんなことじゃないんだ…。寧ろ、出会ってからまだ数える程しか会ってないし、君のことを全部分かってるわけでもないけど…」
それは俺だって同じだよ…?
「君への想いは、どんどん強くなってる、って言うか…」
俺もだよ…。
俺も櫻井さんが好きで好きで…、自分でもどうしちゃったんだろうって思うくらい、好きで…
「だから余計に君を大事にしたいし、君と、その…つまり…、そう言う関係になりたいとも思ってる」
俺だってそう思ってる。
櫻井さんがどんな選択をしたとしても、俺も櫻井さんとそういう関係になりたいと思ってるし、受け入れるつもりでもいる。
もし櫻井さんが俺を“抱きたい”って言ったら…それはちょっと覚悟がいるけど…
でも、その一歩を踏み出す勇気が、中々出ないんだよね?
「大野君は…さ、俺をその…抱きたいとか思ったりするのかな…?」
それまで真っ直ぐに俺の目を見つめていた櫻井さんが、顔を真っ赤に染めて視線を逸らすから、俺までつられて顔が熱くなって来る。
俺が櫻井さんを抱く…、考えなかったわけじゃないし、多分“可能”だと思う。
でも、本当は俺…
『櫻井さんは俺に抱かれても良いって思ってる?』
「えっ…?」
『試してみる?』
「試す…って…、何…を…?」
目を丸くする櫻井さんを抱き寄せ、見下ろした顎先に指をかけた。
一瞬、ニノの顔と櫻井さんの顔とが重なったけど、それを振り払うようにして、戸惑いを隠せず震える櫻井さんの唇に、自分のそれを重ねた。
肉厚な唇の輪郭を舌先でなぞり、僅かに開いた隙間から舌を差し込んだ。
瞬間、櫻井さんの身体に力が入ったのが分かった。