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君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】

第8章 a cappella


櫻井さんに腰を抱かれながら、二人してシーツを替えたばかりのベッドに腰をかける。

シャワーを浴びたばかりだからかな…、体温高めの櫻井さんの隣にいると、心地良い睡魔が襲って来て…

「シャワーを浴びながら考えていたことがあるんだけど…、明日にしようかな…」

俺は『なに?』と首を傾げるけど、櫻井さんはそれに答えることなく、部屋の明かりを落としてしまった。

「今日は沢山泣いたし、疲れたでしょ? 俺の話は明日にして、もうお休み?」

小さなベッドに俺を寝かせ、離れて行こうとする櫻井さん。

俺は咄嗟にその腕を引いた。

「どうしたの?」

聞かれて、問いかけに答えようと口を動かすけど、明かりの落ちた闇の中では、全く通じなくて…

俺は櫻井さんの腕を何度も引っ張った。

「もしかして、一緒に…って言ってる?」

やっと通じた…

俺は月明かりだけが差し込む中で、何度も頷いた。

でも櫻井さんは、

「いいよ、俺はここで寝るから、気にしないで?」

唯一あった座布団を引き寄せると、それを二つに折り畳んだ。

だから俺は、その座布団を強引に取り上げると、俺の枕の横に並べた。

「ちょ…、大野君?」

言うと同時に零れる溜息…

「俺、寝相悪いけど…、それでも良い?」

俺の返事を待つことなく、ギッと軋むベッド。

「おいで?」

見かけに寄らず筋肉に覆われた腕が、俺の肩を抱き寄せて、俺は櫻井さんの胸に包まれた。

「まったく…。君がこんなに頑固だなんて、知らなかったよ」

『それはこっちのセリフだよ…』

「あの…さ、本当は明日…って思ってたんだけど、今言っても良い?」

『何を…?』

顔を上げた俺の顎先に、櫻井さんの指がかかる。

少し震えてるような気がするのは、俺の気のせい?

「俺と、その…付き合ってくれないかな…? 勿論、君の心にまだあの彼がいることは分かってる。でも…それでも俺は構わない。だから俺と…」

俺が答えるよりも前に、俺の唇に触れた柔らかな感触…

やっぱり震えてるって感じるのは、俺の気のせい…なんかじゃないよね?



『a cappella』ー完ー
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