第26章 番外編☆dolce

｢入って？｣

翔さんの手を引き、部屋の中に招き入れる。

｢前住んでた部屋とあんまり変わらないでしょ？｣

俺が言うと、翔さんは部屋の中をグルリと見回し、

｢そうだな｣

呟くように言った。

｢ここね、翔さんの部屋が見えるんだ｣

｢本当だ…、全然気付かなかった…｣

だよね…。
だって俺が見てると知ってたら、パンツ一丁でベランダには出ないもんね？(笑)

｢あ、そうだ…。ちょっと座って？｣

翔さんが思い出したように言って、畳の上に胡座をかいて座った。

なんだろう…

俺は首を傾げながらも、言われるまま畳の上に膝を抱えて座った。

｢実はさ、本社に戻って来ないか、って話があってさ…｣

｢えっ…？｣

｢勿論断ったけどね｣

｢何で？ だって翔さんずっと本社勤務に戻りたいって…｣

もしかして俺のために…？

｢確かにそうだったんだけど…ね…？ でも気が変わったって言うか…、戻れなくなったって言うか…｣

珍しく歯切れの悪い翔さんの物言いが焦れったくて…

俺はリングの嵌った左手を翔さんの手に重ねると、

｢言って？ 俺、何言われても驚かないから…｣

何があっても、翔さんといるって決めたから…

｢実は… さ、マンション売ったんだ…｣

｢えっ…？｣

｢元々あのマンションは彼女と…と思って買ったマンションだったし、いずれは…と思ってたんだ｣

そう…なんだ…？
俺はてっきり、本社勤務に戻るために残してあるんだとばかり…

｢それでな…、その売った金で、あの角の空き地買って…｣

｢へ？｣

｢ついでに言うと、夏には完成予定なんだ…｣

｢完成…って、何…が？｣

｢何が…って、家が…だけど？｣

は？
ちょっと待って…、俺の思考が追いつかない…