君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第26章 番外編☆dolce
「向こう着いたら、ホテルに荷物だけ預けて、相葉さんとこまで送るから…」
膝にかけたコートの下で、こっそり繋いだ俺の手を、翔さんがキュッと握る。
「それなんだけどさ、雅紀さんホテルまで迎えに来てくれるって…」
「そうなの? じゃあ安心だ」
ホッとしたように顔を綻ばせる翔さん。
知らない土地に行くわけでもないのに、翔さんは俺の心配ばかりする。
正直、いつまでも子供扱いされるのは、さすがに寂しさを感じなくもない。
それだけ俺のことを大切に想ってくれてるからなんだろうけど…
「あ、翔さんは? 会議…だっけ、何時頃終わるの?」
俺はサラリーマンとか…経験したことないけど、偉い人達が集まる会議に出席するとか、言ってた気がする。
「そうだな…、会議自体はそれ程時間かからないと思うけど、人事部にも呼ばれてるから…、ちょっと遅くなるかな…」
そう…だよな…
俺は旅行気分でも、翔さんは仕事なんだもんな…
いくら俺が一緒にいたいと望んだところで、その事実が変えられるわけじゃない。
「智は? 智はどうするの?」
「俺は…久しぶりにニノに会って来るよ」
三回忌を過ぎたタイミングで、ニノの遺骨は相葉家の墓に納骨を済ませたと、雅紀さんから聞いてたから…
「そっか…、彼、喜ぶだろうな?」
「だと良いけど…」
何せ天邪鬼なニノのことだから、素直に喜んでくれるとはとても思えないけどね?
「あ、あと松岡先生にも会って来て良い?」
松岡先生とも支店をオーブンした時以来だから、かれこれ一年くらいか…会ってない。
「そうだね、きっと気にしてるだろうから、元気な顔見せておいで?」
「うん、そうする」
なんだ…
翔さんがいなくて退屈するかと思ったら、案外忙しくならりそうだな(笑)