君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第26章 番外編☆dolce
一日留守にしていたせいか、空気のキンと冷えだ部屋に帰った俺は、明かりを灯すことなく、真っ直ぐに窓辺へと向かった。
換気のためでもなく窓を全開にし、満天の星空を眺めるわけでもなく、高台にある景色へと視線を上向ける。
そして寒さに凍えながら瞼を閉じ、心の中でカウントを取り始め、
10、9、8、…、3、2、1…
カウントが0を迎えると同時に、瞼をパチッと開く。
すると、島で一番大きなマンションの一室に、オレンジの明かりが灯る。
翔さんの部屋だ。
「おかえりなさい」
俺は小さく灯った明かりにそう言うと、漸く窓を閉め、真っ暗だった部屋に灯りを灯した。
ヒーターの電源を入れ、ダウンを脱いでハンガーにかける。
特に腹は減ってないから、そのまま真っ直ぐ風呂場に向かってシャワーを浴び、出た頃には狭い部屋にはヒーターから出る暖かな空気が広がっていて…
俺は水分だけをバスタオルで拭うと、Tシャツとハーフパンツだけを身に着け、缶ビール片手にカラーボックスの前に立った。
カラーボックスの上には、以前と変わらずニノの写真が飾られていて…
「ただいま…」
俺は缶ビールの栓を引き抜くと、ニノの写真の前に置いた小さなグラスに注いだ。
そしてグラスと缶を軽く合わせてから、俺は火照った身体に冷えたビールを流し込んだ。
「はあ…、疲れた…」
ベッドの下に腰を下ろし、まるで溜息でも落とすように息を吐き出した。
そうしてチビチビとビールを飲み、二本目の缶が空になった頃、俺は漸くベッドに入る。
睡魔は直ぐにやって来て、俺は深い眠りに落ちる。
それが、週末の二日間を覗いた俺の毎日。
ちなみに、翔さんは俺がすぐ目の前のアパートに住んでることすら知らないんだけどね(笑)