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君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】

第24章 tempestoso…


涙でグチャグチャになった顔で翔さんを見上げると、翔さんは親指の腹でそっと俺の涙を拭った。

そんなことしたってまた濡れるのに…

そしてフッと自嘲気味に笑うと、視線を丁度真上に昇った月に向けた。

「後悔…してるんだ…」

「後…悔…?」

何を…?

「相葉さんに、智が自分自身の足で歩けるようになるまで、会うつもりはない、って言ったことを…」

えっ…?

「出来っこないのにね? だって俺…、こんなにもまだ智のことを愛してるんだから…」

翔さんの頬を伝った雫が、俺の手の上にポツンと落ちる。

「翔さ…ん…?」

俺は戸惑いながら手を伸ばすと、翔さんの頬を静かに流れる涙を、そっと拭った。

笑っちゃうよな?

ついさっきは俺の涙を翔さんが拭ってくれたのに、今度は俺が翔さんの涙を拭ってる…、なんてね…?

「矛盾…してるよな? 俺の方から智の手を離したのに、智の顔見た途端にこのザマだよ…」

頬に触れた俺の手を、翔さんの手が包む。

その手が微かに震えているのが、触れた指先から伝わってくる。

なのにその手はやっぱり温かくて…

「でも俺、もう自分の気持ちに嘘はつきたくないんだ」

月を見上げていた翔さんの視線がゆっくりと降りて来て、月明かりの下で俺の視線と交わった。

「俺…ね、翔さんに手を離して貰って良かったと思ってるよ?」

「えっ…?」

「だって、そうじゃなかったら俺、一人じゃきっと前を向くことも出来なかったと思うし…」

今だって雅紀さんや潤さんに甘えてばっかだけど…

それでも少しずつ…、一歩には全然足りない歩幅かもしんないけど、踏み出せる勇気を貰った。

「だからもう後悔なんてしないで?」

俺ももう逃げたりしないから、だから…

「智…?」

「…うん」

「キス…してもいい…かな?」

「えっ…、あ、ああ…、うん…」

小刻みに震える指が俺の顎先を捉え、翔さんの顔が徐々に俺との距離を縮めて来て…、いよいよお互いの唇が触れるっていう寸での所でピタリと止まった。

「目…、閉じないの?」

「え…あ、ごめん…」

言われて慌てて目を閉じた俺の唇に、翔さんの涙に濡れた唇が重なった。
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