君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第23章 passionato…
程よく酒が回り、凍えていた身体も温まった頃、上田が「ずっと気になってたんすけど…」と、若干呂律の回っていない口調で言って、トロンとした目で俺を見つめた。
「ん…? 何が?」
一見“強そう”に見える上田だが、実は滅法弱くて…、当然先に上田の方が酔い潰れるだろうと思っていた俺は、至って冷静に返した。
「兄貴の好きな人って、どんな人かな…って思って…」
「何だ…、そんなこと?」
「いやぁ…、兄貴ときたら、俺がどれだけ可愛い子紹介するって言っても、全然靡かないじゃないっすか?」
「まあ…ね…」
確かに、上田が見せてくれる写真は、どの子も可愛らしくて、上田の見た目からは想像出来ないくらい、清楚な雰囲気で…、もし俺が普通の男であれば…当然のように一度お会いしたいと願い出るんだろうけど…
そう…、智と出会う前の俺なら確実にね。
でも残念なことに、俺は智以外には、男は勿論…女にだって興味が持てない。
だから上田が不思議に思うのも当然と言えば当然なのかもしれない。
俺は徳利に残っていた酒をお猪口に注ぎ、“お代わり”を頼むと、お猪口を満たす酒を一口で飲み干した。
熱燗で頼んだ筈の酒は、冷めると甘さが抜け、一転喉を焼くような辛い酒に変わっていた。
「俺の好きな人は…そうだな、例えるなら子供みたいな人でね…。今笑ってたかと思うと、急に泣き出したりしてさ…」
正直、面倒臭いところもあったが、俺はそんな智が愛おしくてたまらなかった。
「そう言えば口癖は、“眠い”だったな…。デートの最中でも、全然関係なく言うんだぜ? 参っちゃうよな…(笑)」
「は? なんすか、それ…」
上田が怪訝そうな声を上げる。
当然だ、一緒にいる時間に、突然“眠い”と言われたら…、上田じゃなくても不機嫌になる。
でもそれも智だから許せたし、仮に智じゃなかったら…、即別れ話に発展していたと思う。
智とだったから、どんな瞬間も楽しくて、愛おしくて…
智とだから…