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君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】

第23章 passionato…


寂しくはなかった。

地元の人達も良くしてくれるし、上田という面白い後輩も出来たし、それに週に一二度松本から近況を知らせる電話もあったし…

智に関することは一切教えてはくれなかったけど、電話口から聞こえる松本の声を明るい聞けば、それだけで智が元気にしていることが分かったから…

まあ…、上田は松本の存在を酷く煙たがって、電話がかかって来る度に眉を顰めてたけど(笑)

上田曰く、“第一舎弟”の上田の許可なく俺に近付く奴は、例え古くからの友人であろうと、“敵”とみなすらしく…

俺は、その度に不機嫌もろ出しになる上田が、面白くもあり…、可愛くもあった。

勿論、そこに恋愛感情なんて無い。

上田には、同じ会社の事務員で、結婚の約束までしている彼女がいることを聞いていたから…

正直、羨ましいとも思った。

上田のように、まだ見ぬ先の未来への期待に、胸を膨らませ、目を輝かせることが出来ることが、羨ましかった。

あの日…、智が別れ際に言った言葉…

『この先もずっと好きでいていい?』

あの言葉を信じていないわけじゃない。

ただ人の気持ちなんて、ちょっとしたきっかけで変化するもんだってことを、俺は嫌って程知っている。

だから、俺がどれだけ智を想っていたとしても、智の気持ちまでは…量ることは出来ない。

それでも俺は、今でも智を変わらず愛しているし、例え報われないとしても、この気持ちだけは変わらず持ち続けていたい。

何度上田が、

「兄貴にピッタリな子、紹介しますよ?」

と事ある毎に話を持ちかけて来たが、俺の答えは決まって、

「俺、好きな人いるから…」

その一言だった。

そんな俺を上田は不思議がったが、でもしょうがない…、智以外にはもう考えられないんだから…

「もう二度と会えないかもしんないのに、ずっと想い続けるのって、辛くないっすか?」

上田はそう言ったが、不思議と辛さは感じてなくて…

寧ろ、今でも智を愛し続けていられる自分自身を、誇らしくも思っていた。
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