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君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】

第22章 subito


そして二ヶ月後…

新店の開店準備も問題なく進み、俺は住み慣れた雅紀さんのマンションを出た。

新しい店の場所は、とても自転車で通える距離じゃないから…

潤さんが用意してくれたアパートは、どことなくニノと暮らしたアパートに似た雰囲気の部屋で…

勿論寂しさはあったけど、そこから新たな生活が始まるんだと思うと、誰一人知り合いもいない環境に多少の不安はあったけど、それよりも期待の方が大きかった。

俺はオープンを翌日に控えた日の夜、ずっとダンボールの中に仕舞ってあったニノの写真を、テレビ台の隅に置いた。

遠慮していたわけじゃないけど、雅紀さんのマンションに居候している時には、どうしても出す気にはなれなかったんだ。

適当なグラスにビールを注ぎ、ニノの写真の前に置く。

「久しぶり…だよな、こうして二人で飲むの…」

表情を変えることのないニノに話しかけながら、手にした缶をグラスに軽くぶつける。

「俺さ…、本当は自信なんて全然ないけどさ、やれるとこまでやってみっからさ…」

俺…、お前の分まで必死に生きるからさ…

だから…

「見守っててくんねぇか?」

例え傍にいてくれなくても…
その姿を見ることが出来なくても…

お前が見ててくれるって思うだけで、頑張れそうな気がするからさ…

「…って、これでも随分強くなったつもりでいたけど、まだまだだな俺も…」

自嘲気味に笑って、缶に残ったビールを飲み干した。

その時、

『… ったく、仕方ないなぁ、智は…』

ニノの声が聞こえた気がして、俺は部屋の中を見回すけど、どこにもニノの姿はなくて…

当然だ、ニノはもうこの世にはいないんだから…

でも、きっとニノは俺の傍にいて、いつだって俺の背中を押してくれてるんだよな?

そうだろ、ニノ…?


『subito』ー完ー
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