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君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】

第22章 subito


殆ど会話もなく、三人で静かな食卓を囲む。

正直言うと、あまり居心地は良くない。

でもこんな光景が、あの日…潤さんが自らの罪を告白した日から、ずっと続いてる。

雅紀さんはあの時、「先のことはゆっくり考える」って言った。

その言葉を聞いた時、俺はもしかしたら二人は別れちゃうんじゃないか…って、凄く寂しい気持ちになった。

別に憧れてるわけじゃないけど、二人のお互いを支え合ってる感じって言うか…、そんな二人の姿見てんのが好きだったから、それが見れなくなるかもって思ったら、すげぇ寂しくて…

でも今はそんな寂しさや不安はない。

だって…

「今日何時?」

「九時には出るかな…」

「俺も行くから…」

「分かった」

二人共、食べることに集中しているから、目を合わせることだってないけど、以前は全く無かったこんな何気ない会話も、少しづつではあるけど、増えて来ている。

だからきっと…

時間はかかるかもしれない。

雅紀さんが受けた心の傷は、俺が思っている以上に深いし、潤さんだってまだ過去の呪縛からは、完全には抜け出せずにいる。

二人の間にポッカリ空いた溝は、そう簡単に埋まるもんでもないし、俺なんかがどうにか出来る問題でもない。

どれだけ時間がかかったとしても、二人にしか解決出来ないんだから…

「あ、ねぇ、飯って何食べに行くの?」

「飯…? 何の話?」

あ、そっか、潤さんは知らないんだ…

「病院の後、三人で飯行こうって、雅紀さんが…。ね?」

俺が言うと、雅紀さんは咄嗟に視線を逸らす。

あれ…?
もしかして雅紀さん、照れてる?

「ま、まあ…、智の快気祝いも兼ねてね…。あ、もし用事があるなら、無理しなくても…」

普段は割とおっとりとした口調なのに、珍しく早口になる雅紀さん。

その顔は今度こそそれと分かるように赤くなっていて…

「い、いや…、行くよ」

雅紀さんにつられて…なのか、潤さんの顔も心做しか赤くなっているように見えるのは、俺の気のせいなんかじゃないよね?
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