君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第22章 subito
毎日決まった時間になると、やかましく鳴り響くアラーム音。
バイトでどんなに遅く帰って来ても、必ず同じ時間に起こされる。
もう少し寝たいのに…
俺は眠い目を擦りながら、少し高い位置にある丸まった背中を叩く、…けどピクリとめ反応はない。
仕方なく、
「時間…、起きて…?」
声をかけるけど、…やっぱり反応はない。
…ったく、仕方ないなぁ…
俺はノソノソと起き上がると、何重にも重ねられた毛布を一枚一枚剥ぎ取っていった。
すると漸く…
「寒い…」
小さな呟きと共に、剥ぎ取った毛布を取り返そうとしてくるから、俺も負けていられないとばかりに毛布を引っ張る。
こんなやり取りがもう一年も続いてる。
しかも、俺が使っていた筈のベッドは、居候の部屋に勝手に居候を始めた潤さんに占領されて、俺は硬い床の上に敷いた布団の上に追いやられるし…
マジで冗談じゃない。
ただ、気持ちよく寝ていたところを、何の予告もなく床に叩き落とされることを思えば、この方がよっぽどマシなのかもしれない。
「俺、先行ってるからね? ちゃんと起きてよ?」
「…ああ…」
「怒られんの、俺なんだかんね?」
「しつこい…、分かってるって…」
俺が肩を揺すると、潤さんはやんわりと払い除けて、また毛布に包まってしまう。
ほんと、寝起き悪いんだから…
でも俺はちゃんと知ってるから…、潤さんは絶対起きてくることを…
俺なんかよりもずっと遅くまで仕事して…、なのに誰よりも早くに起きて、潤さんのために朝飯の用意をする雅紀さんのためにね。
だから俺もそれ以上は声もかけないし、しつこく起こそうともしない。
俺は毛布に包まり、ピクリとも動かない潤さんを背に、静かに部屋のドアを閉めた。
廊下に出ると、直ぐに味噌汁の良い匂いがして…
頭よりも先に、俺の腹が目を覚ました。