君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第20章 delicato
どれくらいの時間そうしていたんだろう…
「ごめんな…、智…」
突然言われて顔を上げた俺の隣で、潤さんが気持ちを落ち着かせるかのように、息を長く吐き出す。
そしてスーツのままベッドに横になると、明らかに泣き腫らしたと分かる目元を腕で覆った。
「俺さ、ずっと苦しかったんだ…。雅紀の笑顔を見る度、胸が締め付けられるみたいに苦しくて、辛くてさ…」
『今は? 少しはスッキリした?』
「そうだな…、少しは…な…」
『そっか…』
決して“良かった”とは思わないし、俺に何の罪もないとは思わない。
勿論、どっちの罪が大きいか…なんてことも問題じゃないし、実際ニノがいない今、ニノがどうして死を選んだのか…、その理由だって知ることは出来ない。
それに、潤さんがついた“嘘”は、もしかしたら誰もが持つ当たり前の感情から出たものだったのかもしれない。
ただ、その結果として、雅紀さんから義弟を奪い、俺から声を奪った。
雅紀さんにとっても、そして俺にとっても、簡単に許せることじゃないし、例えどれだけ潤さんが心から詫びたとしても、許すことは出来ないと思う。
雅紀さんは特に…
『ねぇ、これからどうするの?』
「どうする…って?」
『だって、雅紀さん相当怒ってたじゃん…』
いつだって笑顔を絶やすことのない雅紀さんが、あんな風に感情を露にして怒るなんて、滅多にないことだし、誰よりも潤さんのことを愛してる筈の雅紀さんが、その潤さんの顔も見たくないなんて言うんだから、相当だよな…
まあ…、当然と言えば当然…なんだろうけどさ…
「まあな…。でも、俺に出来ることは、一つだげたから…。そうだろ?」
『うん…』
凄く時間のかかることかもしれない。
雅紀さんが潤さんの冒した罪を許すことは、もしかしたらこの先ないかもしれない。
それでも潤さんは和也に謝り続け、雅紀さんを愛し続けるんだろうな…
俺は、潤さんの雅紀さんに対する想いの深さを、改めて知ったような気がした。