君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第20章 delicato
「なんで嫉妬してたか、って…? そんなの決まってんじゃん…。俺の一番が俺じゃなかったからだよ」
「そんなこと…。俺はいつだって潤のことを…」
言いかけた雅紀さんに、潤さんが「それは違う」と首を小さく振る。
「雅紀は気付いてなかったかもしんないけど、お前の一番はいつだって和也だったよ」
『どういう…意味…?』
二人の問題だと…、俺が口を挟むべきではないと分かっていたけど、どうして潤さんがそんな風に感じていたのか…、理由を知りたかった。
「雅紀が俺のことを愛してくれてるのは分かってたし、それを疑ったことは一度だってない。和也のことだって、弟だから大切にしてるんだってことも、ちゃんと理解してたしね?」
“たださ…”と言ったきり、潤さんが言葉を詰まらせる。
でもそれもほんの一瞬のことで、フッと息を吐き出すと、
「たださ…、羨ましかったのかな…」
と言葉を続けた。
「和也は“弟”ってだけで“家族”って呼ばれることがさ…、羨ましかったんだ…。俺はどうしたってお前とは本当の意味での“家族”になることは出来ないから…」
家族…
その一言が、どうしてだか俺の胸に深く突き刺さった。
「義理とは言え、やっぱ家族には勝てないんだよ…。特に俺達みたいな関係は…」
口調こそ冗談を言ってるようにも感じるけど、その表情はとても苦しげで…
そんな潤さんの顔を見ていると、どうしてだか俺まで苦しくなってくる。
多分、俺には潤さんの気持ちが痛い程分かるからだと思う。
俺も、翔さんに子供が出来たって分かった時、今の潤さんと同じことを思ったから…
性的マイノリティへの偏見が色濃く残るこの国では、パートナーシップ証明は得られても、それだって承認している地域は限られているし、ましてや同性婚なんて…法的にだって認められる筈もない。
俺もそれを分かっていたから…、だからこそ翔さんに子供が出来たと知った時、自分から身を引くことを決めたんだ。
紙切れ一枚のこと…
でもそのたった一枚の紙切れさえ、俺達にとってはと鉄もなく高い壁になって立ちはだかることを、俺も…潤さんも知っているから…