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君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】

第20章 delicato


「よいしょ…」と掛け声をかけて、雅紀さんがベッドの上で身体の向きを変える。

肘を立てた格好で顔を支え、いつになく真剣で、なのにどこか微笑んで見える…何とも複雑な表情を浮かべた雅紀さんの目には、薄らと涙が浮かんでるようにも見える。

「当たり前だろ? 血こそ繋がってないけど、和也は俺の大切な弟だし…」

『そっか…、そうだよね…』

良かった…
実際、他人の俺から見ても、血が繋がっていないとは思えない…本当の兄弟と言っても良いくらい仲が良かった。

だから雅紀さんの口からその言葉が聞けたことで、俺はほんの少し安心出来たような気がした。

「俺…一人っ子だったから、俺の親父と和也のお袋さんが再婚して、義弟が出来るって分かった時、超嬉しくてさ…。あ、智覚えてるかな…和也が中学の時着てた制服…」

『制…服…?』

言われて、俺とニノが初めて言葉を交わした当時まで記憶を遡ってみる。

あの頃はまだ、皆中学に入学したてで、制服だってブカフガで…

『あっ…』

「思い出したか? あれな、実は俺が中学の時に着てた学ランなんだよ」

そうだ…
周りは皆真新しい制服に身を包んでいたのに、ニノだけはくたびれた制服を着ていたんだ。

「親父がさ、新しいの買ってやるって言ったのに、和也は頑として俺のお下がりの制服を着るんだ、って聞かなくてさ…(笑)」

『そうだったんだ…?』

「うん… 。最初はさ、親父に遠慮してんだと思ったんだ。でもさ、和也に“好きだ”って言われた時気付いたんだ…、遠慮なんかじゃなくて、和也は少しでも俺を近くに感じていたかったんだ…ってさ…」

そうか…
だからニノはどんなに周りから揶揄われようが、くたびれた制服を大事にしてたんだ…

制服だけじゃない…、雅紀さんから貰った物、雅紀さんと撮った写真…、雅紀さんに関わる物全てをとても大切にしていた。

ずっと傍にいた俺には分かる…

ニノがどれ程雅紀さんのことを愛してたか…
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