君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第20章 delicato
突然額に感じた冷たさに、俺は瞼を持ち上げた。
「お、目、覚めたか?」
『ここ…は…?』
目を凝らして辺りを見回してみるけど、頭がボーッとして…、声の主が雅紀さんだってこと以外、何も分からない。
っていうか…俺、どうしちゃったの?
「もう…、あれだけ風呂で寝るなって言ってるのに、どうして寝ちゃうかな…」
額に乗せたタオルを、氷水で満たした洗面器に浸し、固く絞りながら雅紀さんが溜息混じりに言う。
そっか俺、風呂で寝ちゃって…
『…ごめん…』
「いいよ、もう…。疲れてたんでしょ? 仕方ないよ…」
『…うん』
「それよりさ、水持って来てやるから、服だけ着なよ?」
『…うん』
…って、えっ…?
雅紀さんが洗面器を手に部屋を出て行くのを見送って、俺はまだボーッとする頭を押さえながらゆっくり身体を起こした。
一瞬、目眩のような感覚に襲われたけど、それよりも何よりも、自分が下着すら身に着けていない現実に、サーッと血の気が引くのを感じた。
そりゃそうだよ…な…
多分、風呂からそのままここまで運ばれて来たんだろうから、服を来ていないのも当然なんだけど…
でも…
俺は傍らに置いてあった着替えを手に取ると、まだ熱の冷めきらない身体に着けた。
着替えを手伝って貰ったことだってあるから、裸を見られるのは初めてじゃないし、今更恥ずかしがることでもないんだけど…
でもあの時は、下着だけは辛うじて着けていたし…
『はあ…、俺何やってんだろ…』
一人ごちったその時、水で満たしたグラスを手にした雅紀さんがドアを開け、ベッドの端っこに腰を下ろした。
「ほら、飲んで?」
『…うん…』
グラスを受け取り、乾いた喉に流し込むと、全身の火照りが少しづつ冷めて行くのが分かった。
『ありが…と…。それから、迷惑かけてごめんなさい…』
「謝んなくて良いから…。それよりさ、お前ちょっと痩せ過ぎ。食が細いのは分かるけど、もうちょっと太んないと…」
『…うん』
…っていうか、そこまで見られてたんだ…?