君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第3章 marcato
俺はあの日あったことを、洗いざらい松本に話して聞かせた。
一世一代の覚悟を決めてプロポーズをした結果、意味も分からないまま振られたことは、既に報告済みだったから、その後のことから…だけど。
松本は俺の話を、ずっと黙ったまま、時折小さく頷きながら最後まで聞いてくれた。
そして、俺が全てを話終えると、残っていたコーヒーを一気に飲み干し、
「そっか…」
と、小さく呟いた。
別に、明確な答えを期待していた訳じゃない。
でも何か言って欲しくて、
「俺、おかしい…よな…?」
空になった缶をゴミ箱に捨てようと、腰を上げた松本の背中に問いかけた。
「うーん…、確かにおかしくはあるよね…」
やっぱりか…
自分でも分かっていたこととはいえ、面と向かって言われると、落ち込むもので…
俺はがっくりと肩を落とすと、今度は地面に向かってため息を落とした。
「でもさ、一目惚れだったんでしょ? なら仕方ない…で済ませちゃ、本当はいけないんだろうけど…」
「ちょっと待て…。俺が一目惚れしたなんて、いつ言った?」
「え、違うの? 俺はてっきりそうだと…。だって、八年も付き合った彼女のことすら忘れちゃうくらいだからさ…」
言われてみれば確かにそうかもしんないけど、でも相手は…
「で、とんな子だったの? 翔さんが一目惚れするくらいだから、けっこうな美人さんなんだよね?」
だから、一目惚れじゃねぇっつーの!
って言ったところで、思い込みの激しい松本のことだから、それをひっくり返すってことは、まずありえない。
それに、当たらずとも遠からず…だし。
「可愛い…かったよ? 多分お前も一目見たら気に入るタイプ…だと思う」
「俺? 俺はだって…」
知ってるでしょ、とばかりに目を細める松本。
ああ知ってるよ、松本が実は生粋のゲイで、なんなら週末ドラッグクイーンやってることだって、男の恋人がいることだって、俺は知ってる。
「だからお前に相談してんだろ?」
女ならともかく、こんなにも男の顔がチラついて離れない、ってことの意味が分かんねぇから…。