君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第16章 divisi
人間、弱ってる時はろくなことを考えない、って言うけど…
案外当たってるのかも…
常に頭の中で鐘を打ち鳴らされているような頭痛と、ヒリヒリとした喉の痛み…
おまけに、記憶にすらないくらい久しぶりに出した熱と、全身を襲う筋肉痛に似た身体の痛み…
こうも“痛い”ばかりが重なると、こんな俺だってろくなことは考えない。
このまま誰にも気付かれることなく、俺は死んで行くんだろうか…
あ、そしたらニノのトコ行けんのか…?
ニノと、あっちの世界で最初っからやり直すのも悪くないか…
もっとも、ニノが俺のことを許してくれたら、の話だけど…
それにしても頭痛てぇ…
喉痛てぇ…
身体は焼けるように、背中にゾクリとした寒気を感じて、タオルケットだけでは物足りなさを感じた俺は、手近にあったバスタオルを引き寄せ、タオルケットとバスタオルを二枚重ねて包まった。
頼りないけど、タオルケットだけよりはちょっとマシかも…
俺は頭の中で鳴り響く鐘の音から逃れようと、ギュッと瞼を閉じた。
そして襲って来る睡魔に、身体がフワッと浮き上がる感覚を覚える。
眠りたくなんかないのに…
だって、眠ったところで、どうせ深く眠れるわけじゃないし、熱のせいで眠りが浅いのか、さっきからずっと同じ夢ばっか見るし…
夢の中で俺は歌を唄っていた。
ニノが好きだと言っていつも聴いていたから、自然と覚えてしまったあの曲だ。
特別好きなジャンルの曲でもなかったんだけど、何度も繰り返し聴いてるうちに好きになった曲を、俺は地べたに腰を下ろし、足を投げ出して唄っている。
そんな俺に気を止める人なんていない…、ただ一人を除いては…
その人は凄く悲しそうな顔をして俺の唄に耳を傾けていて…
ふと俺の唄が途切れた瞬間、その人の手が俺に向かってゆっくりとした速度で伸びて来た。
そう…スローモーション、みたいな?
でも、その手が俺に触れることは、とうとう無かった。
贅沢も我儘も言わないからさ…
声なんて永遠に戻らなくたって良いからさ…
せめて夢の中だけでも良いから、触れて欲しかった。