君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第15章 diminish
松本の手が、俺の胸倉を掴もうと伸びる…が、その手は俺のシャツに触れることすらしないまま引っ込められた。
いっそのこと殴ってくれた方が、俺の気持ちもスッキリするのに…
そうすれば、この常に霧の中を歩いているような…、まるで出口のない迷宮のような場所から抜け出せるのに…
「ねぇ、俺言ったよね、櫻井が智と付き合うって言った時に…。智を傷付けたら、例えそれが櫻井であっても許さない、って…。覚えてる?」
ああ、覚えてるさ、しっかりとな…
あの時俺は思ったんだ…
口では智を疎むようなことを言ってはいるが、実際は違うんだって…、松本は松本なりに、智を大切に思っているんだ、って…
ただ、それは智も同じで…
松本とは口も聞きたくない、顔も見たくない…そう言う割りには、どこか頼りにしている節もあった。
勿論、そこには相葉さんや、亡くなったニノ君も含めた、俺の知らない複雑な事情があったから…なんだろうけど…
「遊び…だったわけじゃないよね?」
「えっ…?」
「俺達みたいな人種ってさ、世間的には物珍しく見られがちだから、興味本位で…ってことも少なくないんだよ…。だから櫻井もそうだったのかな、って…」
「違う! それは違う…興味本位とか、そんな簡単なじゃなくて…」
そりゃ最初はそうだったかもしれない。
松本が言うように、同性との恋愛がどんなものなのか…興味だって、確かにあった。
でもそれだって智と過ごす時間を重ねる毎に薄れて行き、気付いた時には、もう後戻り出来ないくらいに智のことを好きになつていた。
「そうじゃなきゃ抱いたりしないよ…」
不意に口をついて出た言葉に、俺は慌てて口を塞いだ。
しまった…と思ったが、時すでに遅し、で…
耳ざとい松本が聞き逃す筈もなく…
「え、ちょっと今の、どういうこと? 抱いたって…、智を抱いた…の…?」
両肩を掴まれ、乱暴に揺すられながら、俺は諦め交じりに頷いて見せ、そしてゆっくりと…言葉を慎重に選びながら、智との間に起きた出来事を、松本に話して聞かせた。