君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第2章 calando…
「何…考えてんの…?」
行為の後の、何とも言えない気怠さの中、ニノが今にも閉じてしまいそうな瞼を擦った。
「ん…、別に…」
「そ? それよりさ、今日会った人ってどんな人?」
ニノが他人のことを気にするのは珍しいことで…
「えっ…、別に普通の人だけど…なんで?」
俺はどうしてだか答えに迷ってしまう。
別に悪いことをしたわけじゃないし、あの人ともう一度会える…なんて保証もない。
ただ、一瞬でこの瞼の裏に焼き付いてしまったあの人の笑顔と、あんまり覚えちゃいないけど、触れた肩の安心感が、俺に答えを躊躇わせた。
「ちょっと気になってさ…。だって今日の智、いつもと違うから…」
「俺…が…?」
「うん…、何が…とはハッキリ言えないんだけど…、凄く楽しそうって言うか…」
「そう…かな…、気のせいだろ? 俺、別にいつもと変わんないし…?」
自分では何一つ変わったつもりはない。
でも、一緒に過ごして来た時間の長さと、元々の勘の鋭さは、ちょっとした表情や、感情の起伏でさえも見逃さないんだろうな…
「ふーん…、ならいいんだけど…」
俺の答えに納得がいってないのか、ニノが傍らに丸まっていたタオルケットを頭からすっぽり被ってしまう。
こうなってしまうと、俺が何を言ったところで無駄で…
俺はそんなニノを、タオルケットごと腕の中に包み込んだ。
だってそうすることしか、俺には出来ないから…
この、時間を追うごとに大きくなって行く感情の正体は、俺自身でさえも謎で…
そして、その感情の向いてる方向は、今俺の腕の中にいるニノではなくて、明らかに「あの人」に向かっている…ってことだけは、ハッキリとしている。
はあ…、俺、一体どうしちゃったんだろ…
〘calando…〙完