君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第13章 coda
ベッドにそっと智を下ろし、軽く唇を重ねた。
ドクドクと打ち付ける心臓の音が煩くて、
「明かり…消そうか…」
緊張を誤魔化すように言うと、智はゆるゆると首を横に振った。
「消さなくて良いの?」
『…うん』
「良かった…、俺も同じだから…」
『えっ…?』
「智の姿をこの目に焼き付けておきたいから…」
どうせ最初で最後になるのなら、智の全てをこの目と身体に、そして記憶に…、一生消えないように焼き付けておきたい。
俺は着ていたポロシャツを脱ぎ、横たわる智の上に覆い被さった。
恥ずかしさからか、逸らそうとする視線をキスで繋ぎ止める。
角度を変えながら、自然に俺を招き入れてくれるようになるまで、何度も何度も触れるだけのキスを繰り返した。
やがて薄らと開きかけた唇の間に、そっと舌先を滑り込ませ、逃げようとする智の舌先を捉え、どちらかのの息が続かなくなるまで、熱く深く、時に巫山戯合いながらお互いの体温を感じ合った。
初めて…かもしれない、キスがこんなに甘いものだと感じたのは…
そして浅い呼吸を繰り返す智の首筋に顔を埋め、丁度智の鼓動を感じられる場所にキスを落とすと、智の身体がピクリと跳ねた。
擽ったがりの智だから、当然擽ったくて身を捩ったとばかり思っていた俺は、智の顔を見た瞬間、そうじゃないってことに気付き、それからはしつこいくらいにキスをして、智の首筋にいくつもの赤い花を咲かせていった。
いつかは跡形もなく散ってしまう花だと知りながら、それでも残さずにはいられなかった…、俺が智を心から好きだったと言う証を…
シャツの上から智の胸に手を当てると、智の心臓の音が直接俺の手のひらに響いてくる。
ドクドク…、ドクドク…、と…
俺は智の手を取り、俺の胸へと引き寄せた。
「一緒だね…?」
俺がそう言うと、智は少しはにかんだ笑いを見せ、瞼を静かに閉じた。
その顔が堪らなく綺麗で…
俺は生まれて初めて、膨らみを持たない同性を相手に、欲情という感覚を覚えた。