君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第2章 calando…
曇った表情のまま、俺に背を向けてしまったニノに、どうしたら信じて貰えるのか…
俺は少ない脳みそをフル回転させた。
で、出した答えは…
「不安にさせてごめん…。でも俺…、お前だけだから…」
俺はすっかりいじけてしまったニノの、小さく上下する肩を背中からそっと抱きしめた。
「信じてくれよ…。な?」
「ほんと…に…? 嘘じゃない?」
丁度胸の辺りで結んだ俺の手に、ニノの丸っこい手が重なる。
さっきまであんなに強気だったのに、今のニノは全身で俺に向かって不安を訴えてるようにも感じる。
ま、それも仕方のないことなのかもしれない。
ニノがこんなに不安になるのには、俺の過去のあやまちと、それともう一つ…、ニノ自身が過去に受けた深い深い心の傷のせいだ。
永遠に癒えることのない傷は、俺がどんな言葉で取り繕ったところで、ニノの心に闇を落とす。
それが分かっていながらも俺は、
「うん、嘘じゃない。俺はニノのことしか好きじゃないし、これからだってニノ以外の人を好きになったりしないから…」
ニノの心に訴えかけるんだ。
決して偽りではない…、けど、確約も保証もない、誓いの言葉を…
そしたらニノが安心することを、俺は知ってる。
「絶対だよ? 約束だよ?」
ほらね?
「うん、約束する。だからもうそんな顔すんな…、な?」
「もうしない…。しないから…だから、キス…して?」
肩越しに目を閉じて俺を振り返るニノ。
俺はその細い顎に指をかけ、薄く開かれた唇に自分のそれを重ねた。
その時、不意にあの人…たった一度だけ会った、あの人の顔が脳裏を掠めた。
そう言えば、別れ際に何か言ってたけど…、何て言ってたんだろう…
寝ぼけてたせいか、全然覚えてないや…
俺はニノをベッドに押し倒しながら、もう二度と会うことはないであろう、あの人の顔を瞼の裏に思い浮かべていた。