君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第13章 coda
少しでも長く智との時間を過ごしたくて、深夜までバイトのある智には申し訳ないかと思ったが、待ち合わせの時間は、普段仕事に出るのと同じにした。
どちらかの家から一緒に出ることも提案したが、智曰く…“ それじゃ意味が無い“ そうで、俺の提案は速攻で却下された。
それに、たとえ一泊とは言え留守にするとなると、簡易的な物ではあったが、ニノくんの仏壇に線香を上げられなくなるのも気になっていたようだった。
俺は会社から帰宅すると、買って来た弁当で晩飯を済ませ、シャワーを浴び終えると、少々時間は早いがすぐに就寝の態勢に入った。
慣れない車の運転があるから、睡眠不足は禁物だ。
ベッドに入り、「おやすみ」と、だけ智にメッセージを送る。
本当はもっと話したいことがあったが、止まらなくなりそうだったから止めた。
アラームをセットして、部屋の明かりを全て落とすと同時に瞼を閉じた。
朝からフル稼働状態だったし、なんなら残業だってミッチリこなして来てるし、身体は程よく疲労している筈だから、すぐ眠れると思った。
…が、興奮してんのかな…、全然眠れやしねぇ…
これじゃ、遠足を翌日に控えた子供みたいじゃんかよ…
結局、ベッドの中で何度も向きを変えること数回…
漸く眠りについたのは、窓の外が僅かに白んで来た頃だった。
睡眠…と言うよりは、ほぼ仮眠に近い状態でアラームに起こされた俺は、目が覚めると同時にスマホを手に取った。
そしてそこに表示された「楽しみにしてる」の一言を見た瞬間、思わず笑みが零れた。
とは言え、智から返信があった喜びに浸ってる程、時間的な余裕はない。
ベッドを飛び出た俺は、コーヒーのセットを先に済ませてから、着替えを始めた。
財布とスマホ、それから事前に借りておいたレンタカーのキーをローテーブルの上に並べ、タイミング良く落とし終えたコーヒーをカップに注いだ。
ミルクと砂糖を多めに投入し、カップに口を付けようとした、丁度その時…
インターホンが鳴り、モニター画面にエントランスの様子が映し出された。