君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第12章 sostenuto
「ふーん…、で、勢いで襲っちゃったわけだ?」
襲ったって…、そんな言い方しなくても…
『潤さんが悪い』
あんなDVDを翔さんに貸したりするから、だから…
「まあね…、潤もお節介が過ぎると思うけど、何も襲わなくても良かったんじゃない?」
だから!
俺は襲ってねぇし…!
「まあ…、分かんなくもないけどさ…、その…早くそういう関係になりたい、って気持ちって言うかさ…。でもさ、焦る必要はないんじゃない?」
『俺は別に焦ってなんか…』
確かに、翔さんと“そういう関係”になりたいとは思ってる。
でも今すぐどうこうとか…、焦る気持ちなんてない。
「そっか…、うん、そうだよな…」
妙に納得した風で、両腕を組んでウンウンと頷く雅紀さん。
多分雅紀さんは、俺よりもずっと翔さんの今の心境を理解してるんだと思う。
雅紀さんも翔さんと同じ…、潤さんと付き合う以前は、女の人しか愛せない種類の人だったから…
『雅紀さんも最初は怖かった?』
「俺? 俺は…そうだな…、怖くなかった、って言えば嘘になるかな…」
やっぱそうなんだ…?
「でもさ、潤が凄く優しくしてくれたから、不思議と安心出来たかな…」
『潤さんが?』
意外だった。
だって俺の知ってる潤さんはもっと強引で、そういうことに関してガツガツしてそうな印象しかなかったから、まさか優しく出来るなんて…正直思ってもなかった。
人って見かけによらないんだな…
「だからさ、櫻井さん…だっけ、どんな答え出すか分かんないけどさ、智は安心していいんじゃない? それにあの人、智が思ってる以上に、智のこと好きだと思うよ?」
そう…なのかな…
俺には分かんねぇや…
「だってそうじゃなかったら、わざわざ有休取ってまで智と旅行行こうなんて、普通思わないでしょ?」
えっ…?
『何の話し?』
首を傾げる俺を見て、雅紀さんが咄嗟に「しまった」って言って口を手で塞いだ。
「聞いて…なかったの?」
うん…、何も聞いてないよ…?
つか、何で雅紀さんが翔さんの予定知ってんの?