君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第12章 sostenuto
バイト中、ケツポケットで震えたスマホ。
電話にしろメールにしろ、俺のスマホを震わせる相手は、一人だけ…
俺は入っていたオーダーを素早く終わらせると、トイレに行くと嘘をついて厨房を離れた。
エプロンを外し、店にある唯一のトイレに駆け込んだ。
内鍵をかけ、スマホを手に便座に座る。
スマホのサイドボタンを押すと、そこに表示されたのは、
「会いたい」
そのたった一言。
昨日会ったばかりなのに、もう?
心の中でクスリと笑いながら、でも嬉しくて…
『俺も会いたいよ』
短い一言を返した。
本当は不安だったんだ…
勢い(だけじゃないけど…)であんなことをしちゃったし、嫌われたんじゃないか、って…
男同士のセックスに対して、余計な恐怖感を植え付けてしまったんじゃないか、って…
翔さんは、お互いにハッキリと答えが出せるようになるまで待とう…と、そう言ってくれたけど、やっぱり不安で…
ニノの手前、自分だけが幸せになるのは許されない、って分かってはいるけど、でも翔さんを好きな気持ちだけは、どんどん強くなる一方で…、そう簡単に止められそうにない。
俺も翔さんと同じ…
昨日会ったばかりなのに、もう会いたくてたまんないよ…
そう言えば…
週末は休みだって言ってたし…、予定とか入れちゃったのかな…
聞いてみる?……でもどうやって?
「日曜日って暇?」…って?
あ、それとも「日曜日、会える?」とか?
いやいや、それだとなんか…俺めっちゃガッツいてるみたいじゃん?
どうしよう…
参ったな…、こんなの初めてで、どうして良いのか、さっぱり分かんねぇや…
だってニノと付き合ってる時は、一緒に住んでたこともあって、わざわざ連絡を取り合うこともなかったし、そもそもお互いの休みとか、全部…ではないけど、把握はしてたから、こんな風に相手のこと考えるとか…あんましたことないから…