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recent〈ONE PIECE〉

第1章 21時の邂逅


 夜も更け、月が青白く海を照らす、まるで絵画のような情緒ある風景には似つかわしくない集団、そして罵り合い。エースは怪訝そうな表情を浮かべて、その物騒な集団に割って入った。
「オイ、お前ら何やってンだ?」
 こうして冒頭の〈或る女溺死事件〉へ繋がるわけである。無論、死んではいない筈だが。


 午前10時、モビーディックでは、酒が抜けた比較的マトモな船員たちが活動を始めていた。
 昨夜の溺死しかけた女は治療室で気を失ったままだ。何でも、ナースたち曰く、身体中謎のタトゥーだらけのワケあり女らしく、連れ帰ったエースとハルタは治療室で彼女の目覚めを待っていた。勿論、怪しい女の監視という名目である。
「〈記憶はメモをみてlimit30min〉?読みづれえな…」
 エースは未だ目覚めぬ女の鎖骨に指を這わせる。その指先には鏡文字。
「エース、それセクハラ」
「いや、なんか、タトゥーが変なんだよな」
「左手の甲には〈名前はメルトリリス〉か。確かに変だけど」
 二人は眠る女の周囲を観察するように彷徨く。
「右手の甲には、何だ、果物と月?みたいな模様が入ってるぞ」
「左腕の内側には数字の羅列」
「お、右肩に〈SB‐ロシ…」
 エースが右肩のキャミソールの紐をずり下げ、タトゥーの文字列を読み上げようとした直後、絹を裂くような悲鳴が船に響き渡った。
「テメェッ!なにやってンだ!?寝てる女のコの服を捲りあげるなんて、ド変態なの…!?」
 突如、間の悪いタイミングで目を覚ました彼女は頬を真っ赤に染めて目を潤ませた。なるほど、起き抜けに見知らぬ若い男に服を捲られているというのは、中々に、言葉にし難い性犯罪臭がするものである。
「え?え!?ちがう!おれは何もしてない!」
 特に下心もなく行ったそれだが、言われてみればなんとも際どい行動だったと、少し顔を赤らめるエース。然しながら、色付いた頬は彼の言い訳の真実味を尽く消し去った。ハルタも助け舟の余地がない。
「えーん、犯されるう…たすけて兄上ぇ…!」
 女の瞳からつるりと涙の粒が数滴落ちたところで、このカオスな治療室に終止符が打たれた。
「何を朝っぱらから騒いでるんだよい…」
 治療ベッドに座り込む乱れた女、顔を赤らめオロオロと落ち着きのない末っ子、お手上げだと言わんばかりに少し離れて壁際に佇む少年。
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