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recent〈ONE PIECE〉

第2章 ラッキーガール


 医療班は、脳への受傷は発症のトリガーに過ぎず、精神面に深く起因しているのではないかと帰結した。
 エースは分かったような、分からないような微妙な顔で頷きながら、日常生活に支障が無さそうと分かるとホッと息をついた。彼女が年齢の割に幼げであったり、放っておいたら生きていけそうになかったり、そういった面で彼の兄心がくすぐられているのだろう。メルトリリスに大分絆されているようだった。これは、エース以外にも言えることで、マルコやサッチ、他の隊長、クルーも、まるで妹のように甲斐甲斐しく世話を焼いている。
 そうして、話題が一周回ったところで本来の議題「メルトリリスの悪魔の実の能力は何ぞや」に戻ったのだった。


 ティーチは珈琲を一口啜ると、ここまでの過程でようやく纏まった考えを述べる。
「月のマークと、ギャンブルが得意な点を考えると恐らくそりゃあ《ツキツキの実》だろうな」
「ツキツキの実?」
 ティーチは続ける。
「この世界には《マトマトの実》という悪魔の実がある。これは、簡単に言や能力者が狙った的を絶対ハズさねェっていう実なんだが、《ツキツキの実》はこの上位存在に当たる。何に関しても中(あ)てちまうんだ。メルティ、お前、射撃はできるか?」
「できる。得意だと思うぞ」
 メルトリリスは頷き答える。射撃が得意というのは彼女の適当な予測という訳ではない。昨夜、彼女が海へ大変不本意なダイナミックジャンプをキメた時、荷物の類はすべて海底へ沈んでしまった訳であるが、唯一、ハーネスベルトに下げていた中折れ回転式拳銃「ウェブリー Mk IV」が二丁、無事に彼女の手元にあった。
「そうか。恐らくお前はハズさねェ、百発百中だろうよ。悪魔の実で得た強運故の才能ってやつだ。ギャンブルも然り、だけどな…」
「まあ、要するに、ラッキーガールってことだろうよい」
 ギャンブルを敢えて茶化すように言うティーチの言葉を、マルコが簡潔にまとめた。
「それにしちゃ、昨夜は不運続きだったみてェだけどな!」
 笑いながら言うエースを、メルトリリスがキョトンと見つめる。
「昨日何があったか忘れちゃったけど、そのおかげで今ここにいて、おいしいもの食べて、おしゃべりしてるんだ。だから、結局、わたしはラッキーだぞ!」
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