第26章 翡翠の誘惑
「ペトラとオルオをリヴァイ班に任命した理由…?」
マヤは初めて耳にする情報に胸が躍った。
新兵のときにはもう、調査兵団の精鋭部隊である調査兵団特別作戦班、通称 “リヴァイ班” は、存在していた。
あとから知ったことだがリヴァイ兵長は、訓練兵になってから調査兵団に入ったのではなく、特殊なルートで入団したとのこと。それがマヤやペトラ、オルオたち101期生が調査兵団に入団する三年前の話だ。言い換えれば、マヤが訓練兵団に入団したのと同じ844年に、リヴァイは調査兵団の一員になった。
そしてその翌年には兵士長に就任。ほどなくしてリヴァイ班が結成された。
少数精鋭、圧倒的な戦闘力を有する者で構成されたリヴァイ班ではあるが、その相手は巨人であるからして、いかに優秀な班員であろうとも欠員という事態からは逃れられない。
欠員すれば、じっくりと戦績を吟味して選定する。
オルオとペトラを班員に決定したときにも、リヴァイは熟考した。
二人以外にも候補はいた。
その候補も無論、圧倒的な戦闘力を持っていた。立体機動で飛行する速さ。ブレードさばき。巨人の討伐数、討伐補佐数。候補に挙がった兵士たちはみな、どれをとっても優秀だった。おまけにペトラとオルオ以外の候補は四年目、五年目の兵士であり、経験則から予想しても間違いなくリヴァイ班で活躍できる人材ばかりだ。
なのにリヴァイが、まだ二年目であるペトラとオルオを任命したのは、ひとえに彼らが幼馴染み特有の息の合った戦いができるからだった。
得体が知れない巨人を討伐するには個々の能力はもちろんのこと、いかに連携して戦うかが非常に重要なのだ。
その点、ペトラとオルオの二人は申し分がなかった。
「どれだけ普段喧嘩ばかりしていようが、いざ巨人が現れたならば、まるで相手が自分かのように…、次にどう行動するか手に取るようにわかって協力できる絶妙なチームプレイが必要だからな。その点、あいつらに勝てるコンビはいないんじゃねぇか?」
リヴァイの声は確信に満ちていた。
「だから俺はあいつらを選んだ。そしてその選択が正しいかどうかはわからねぇが、少なくとも俺は、今の班は最高だと思っている」