第25章 王都の舞踏会
「は? 壁外調査…?」
リヴァイの眉間の皺は深くなり、エルヴィンが身を乗り出した。
「マヤ、詳しく話せ」
「はい」
マヤは音と映像でフラッシュバックした記憶を話す。ペトラとオルオも目を見開いて聞いている。
「このあいだの壁外調査です。団長の開門の号令を待っていたときでした。群衆の後方に馬車を見ました。御者台には燕尾服を着た御者がいる、二頭立ての馬車です。その車体にあの紋章が施されていました」
「そうか。金を出して壁外調査をさせて、見に来ていた訳か」
エルヴィンが言えば、リヴァイも考察する。
「紋章入りの馬車となるとトロスト区で馬車を拾ったんじゃねぇな。……連絡船で馬車ごと来たのか。ご苦労なことだな」
「あるいは何日もかけて、馬も途中で換えて、陸路の可能性も一応はある」
「どれだけ暇なんだ、貴族の豚野郎は」
「彼らは道楽のためなら金も時間も惜しまないからな」
エルヴィンは皮肉な笑みを浮かべたあと、マヤに訊く。
「そこまでしてやってきて何をしていたかだ、問題は。マヤ、その馬車は… 馬車の中の人物は何をしていたかわかるか?」
「遠かったし、よくは判別できなかったのですが…。恐らく若い男性の人影が見えました。熱心に隊列の先頭をうかがっているようでした。それから…」
マヤの脳裏に浮かぶ、きらりと光った何か。
「一瞬ですが何かが光りました。推測ですが、双眼鏡かと…」
「なるほど…。双眼鏡で何かを覗いていた…」
つぶやくエルヴィン。
「……誰か… じゃねぇのか? 隊列の先頭なら…」
リヴァイがゆっくりとペトラを見る。つられてエルヴィンも、マヤも、オルオも。
「……私を… 見ていたってことなんですね?」
そう結論を出したペトラの声は震えていた。