第25章 王都の舞踏会
はじめはゆっくりとした出港だった連絡船は、みるみるうちに速度を上げた。
「意外と速いね?」
「そうだね。途中でエルミハ区に寄るけど、王都まで7時間くらいで到着するから、このくらいの速度が出ないと駄目なんじゃない?」
「へぇ…、マヤってやたら連絡船に詳しくない? 本当に乗るの初めてなの?」
訝しげな顔をするペトラ。
「うん、初めてよ。ちょっと昨日に気になって、図書室で調べただけ」
「え? 調べたって何を?」
「えっとね、ほら見て」
マヤは頭上に張り渡されている鋼索(ワイヤーロープ)を指さした。
「あの鋼索を伝って移動する仕組みなんだって。あれがあるから向かい風でも速度が出るらしいの。動力は、立体機動装置と同じ圧縮されたガスよ」
「「へ~っ!」」
ペトラとオルオが同時に目を真ん丸にする。その素直な反応に気を良くしたマヤは、少し胸を張って話をつづけた。
「徒歩か馬しか移動手段のない人類のために、フリッツ王のご先祖が私財で人類領域に運河を張り巡らして連絡船を造ったそうよ。旅客以外にも貨物や兵団物資、ときには馬も運搬するんですって。すごくない?」
「うん、すげー!」
単純なオルオの感想よりは少し複雑なペトラの疑問。
「貨物や兵団物資に馬って…! そんなに色々乗せちゃって沈まないのかな…?」
「最大積載量は150tって書いてあった」
「150tってどれくらい?」
「……それはわからないよ…」
「なんだよ、使えねぇな!」
オルオの発言に、
「ごめん…」
マヤがしゅんとうなだれて謝れば、
「ちょっとオルオ! 自分では何も調べないくせに、マヤにそんな口きくな!」
ペトラの雷がオルオに落ちた。