第23章 17歳
それから平穏無事に時は過ぎて、いよいよ明日はリヴァイ兵長と約束した日曜日。
場所はミケ分隊長の執務室。
ちょうど休憩の時間で、もうすっかり休憩仲間となったこの執務室の主のミケ、ミケの執務の手伝いをしているマヤ、そして隣の執務室の主ではあるがほぼ毎日やってくるリヴァイが顔を揃えている。
マヤの淹れた紅茶を皆でいつもどおりに楽しんでいると。
「マヤ、明日は調整日だったな?」
ミケが訊いてきた。
「はい」
マヤはドキリとする。
調整日の前日にミケが確認の意味なのであろうか、“明日は調整日だったな” と話しかけてくることは今までに何度もあること。
いたって普通の出来事であるのに、明日が特別な日であるマヤにとっては胸が爆発してしまいそうなくらいにドキドキして仕方がない。
「どこか行くのか?」
「………」
全く深い意味もなさそうに訊いてくるミケなのだが、マヤはどう答えたらいいかわからず、とりあえずは黙った。
そして同じソファに少し離れて座っているリヴァイを見る。
リヴァイは澄ました顔をしている。独特な掴み方でカップを持ち紅茶を飲んでいる。
……兵長、どう答えればいいのですか? 明日一緒に出かけることを、ミケ分隊長に言ってもいいのですか?
マヤはその琥珀色の瞳を必死でリヴァイの青灰色の瞳に向けて、声には出さないが訴えかける。
だってどう答えたらいいかわからないもの。
特に口止めされてはいないけれど、でももしかしたら兵長は内緒にしておきたいのかもしれないし。
立体機動装置の倉庫で約束をした日から何度も、リヴァイの執務の手伝いで二人きりになっていたのに、“執務のお礼” で出かける日のことをどういう風に扱えばいいのか確認しておかなかった自分が恨めしい。