第28章 たちこめる霧に包まれたひとつの星
「お疲れ様、ジョニー」
マヤはにこやかに迎え入れ、野戦糧食で口の中がいっぱいのギータとダニエルはお疲れと言う代わりに片手をひょいと上げた。
「タゾロさんは? 一緒じゃなかったの?」
宿営地での見張りは、それぞれの持ち場を通常は二人一組となって受け持つ。そして2~3時間ごとに交代する。
タゾロとペアを組んで見張りの任務に就いていたジョニー。
そのジョニーが単独で帰ってきたので、マヤは怪訝そうに質問したのだ。
「俺らの持ち場の東の屋上はちょうど城の尖塔も範囲だから、二手に分かれてたんです。タゾロさんが尖塔、俺が下。それで俺のとこに第五班のヤツが交代で来たからソッコーで帰ってきたんすけど、タゾロさんを待たねぇとヤバかったっすかね?」
「ううん、そういうことなら別にいいの。そのうちタゾロさんも戻ってくるわ。……座って?」
納得したマヤは空いている椅子に座るようジョニーにうながした。
ここはダイニングルームなので、テーブルと椅子だけはきっちりと揃っているのだ。
言われるままに座ったジョニーは、ギータとダニエルを見て笑い飛ばした。
「なんだよ、お前ら。粉だらけじゃねぇか、もっと上品に食えよな!」
テーブルの上に落ちている野戦糧食のかけらやら粉やらを指さした。
「仕方がないわよ。二人ともとってもおなかが空いていたんだから…。あっ、お疲れ様です、タゾロさん」
マヤがギータとダニエルをフォローしているところへ部屋の扉が開いて、タゾロが入ってきた。
ジョニーのときとは違って、ギータとダニエルは急いで口の中の野戦糧食を飲みこむと、声を合わせた。
「「お疲れ様です!」」
「お疲れ」
ふ~、疲れたといった風情で腰を下ろしたタゾロに、ジョニーがぺこりと頭を下げた。
「すみません、タゾロさん。何も考えずに先に帰ってしまって…」
「あの塔、ぼろいわ、下りるのに時間がかかるわ、大変でな…。待っててもらった方が気使うし、別にかまわないよ」
タゾロが怒っていなくて、ほっと胸を撫で下ろすジョニー。