第27章 翔ぶ

リヴァイが何か言おうと、その薄いくちびるをひらきかけたときに、レイが先んじた。

「……ひとつ訊いておきてぇんだが、今日兵士長がやってきたのは団長のさしがねか？」

「いや…、あいつは関係ねぇ」

「そいつは良かった。オレが頭を下げたときに快く受け入れてくれて応援までして送り出してくれたのによ、手のひらを返して刺客を送りこんできたのかと焦ったぜ」

レイは少年のように、心底ほっとした感情を丸出しにしている。

その様子を目の当たりにしてリヴァイは。

「ハッ、何を勘違いしているか知らねぇが、エルヴィンは応援などこれっぽっちもしていねぇが」

「そんなことねぇよ。団長はな、こう言ってくれたんだ。“未来は不確定だ。いつだって誰にでも、どんなことも起こり得るからね” と。オレだってな、無茶してるってことはわかってるさ。出逢って間もねぇのに結婚してくれだなんてよ。だがな、今まで感じたことのねぇ気持ちっていうか衝動ってもんがオレを突き動かす…。女はキャーキャー黄色い声を上げるしちめんどくせぇだけのものだったんだがな。けどマヤは違う。断られるのが怖ぇなんてよ…。このオレがだぜ？」

そこで言葉を切ったレイを見ながらリヴァイは内心で、“知るか、ナルシストめが！” と思っていたが黙っていた。

「だから経験もしたことのねぇ不安が押し寄せてきてな…。そんなときに団長の言葉は胸にしみたぜ…。あれは間違いなくオレへのエールだ」

「あぁ、そうかよ…」

リヴァイは意外とぺらぺら心情を語るレイに若干うんざりしていた。

「言いたいことはそれだけか？」

「柄にもなくしゃべっちまった。おしゃべりがすぎる男は嫌われるのによ…」

「自覚があったのか」

「まぁな。こんな形じゃなければあんたとは気が合ったかもしれねぇな、兵士長」

「……は？ 俺は全くと言っていいほどそんな気はしねぇが」

顔をしかめるリヴァイを見て、レイは愉快そうに笑った。

「だってそうじゃねぇか、女の趣味が同じなんだぜ？ これ以上に気が合うことはねぇだろうが！」