第27章 翔ぶ
昏睡状態から目覚めたあとに兵長に見守られながら眠りにつくことがなかなか難しくて、オルオが話していた巨人の数え歌を試してみたが、巨人に襲われた直後だっただけに逆効果であったこと。
そして巨人の代わりに数えたのが。
「ふふ…、あはは」
突然笑い始めたマヤに、怪訝な目を向けるペトラ。
「なに笑ってんのよ」
「前にね、オルオの言っていた巨人の数え歌を試したことがあるのよ。ぎゅっと目をつぶって “巨人が一匹、巨人が二匹、巨人が三匹、巨人が四匹…” ってね。でもそれをやってみたのは壁外調査の…、巨人に襲われたときの夜だったから…」
「あぁ、うん」
ペトラはすぐに察して、うなずいた。
「巨人に襲われたあとに、巨人をいっぱい思い浮かべて眠るなんてのは駄目だね」
「そうなの」
「あれ? でも今、笑ってたよね。何がおかしいの?」
「うん。実はね、巨人を数えるのはちょっときつくて無理だったんだけど。その代わりにオルオを数えてみたんだ」
「へ?」
あんぐりと口を開けているペトラを尻目に見ながら、マヤは楽しそうに話す。
「“オルオが一匹、オルオが二匹、オルオが三匹、オルオが四匹…” って。巨人みたいに裸のオルオが数えるたんびに増えていって、そこらじゅうをスキップしてるの!」
「げっ、何それ! 気持ち悪…」
「気持ち悪くなんかないよ、すごく楽しい気分になって眠れたんだから」
「えええ、マヤの感覚変じゃない? そんなの寝る前に思い浮かべたら、私なら絶対悪夢を見るわ…」
心底嫌そうな顔をして、ペトラは首を大きく左右に振った。
「でもまぁいいか、オルオの馬鹿でマヤが眠れるんだったら。じゃあいい? オルオでも数えて今日はよく寝るのよ?」
「了解」
“オルオでも数えて” という言い回しがおかしくて、マヤは笑顔でうなずいた。