第27章 翔ぶ
「ちょっと、ペトラ! ゲジゲジだなんて。団長の眉毛は…、ちょっと太めではあるけれど」
「ちょっとどころじゃないわよ」
ペトラの怒りは収まらない。
「ごめん、私の説明が下手だったね。レイさんが細かく条件をたくさん出してきて、それを全部団長が承諾したんだけどね、それはあくまでも私がプロポーズをOKしたあとの “おまけ” みたいなものだって分隊長が」
「“おまけ” ねぇ…」
「うん。だから条件のことは気にしないでいいんだって団長も分隊長も」
「ほんとに?」
「ほんとに。分隊長もね、最初は腹が立ったんだって。でも団長の承諾の真意を理解して、そのうえで私の好きなままに返事をしたらいいとアドバイスをしてくれたの。分隊長がそう言うなら、そうなんだって思えた」
「まぁ…、ミケ分隊長がそう言うなら、そうなんだろうけど。っていうかマヤの分隊長への信頼度高いよね」
「……新兵のときからずっと変わらず見守ってくれているから。団長室で団長と二人きりだったら、素直に団長の話を聞けなかったかもしれないわ」
「そっか。じゃあ分隊長様様だね!」
「うん」
マヤはコップに残っていた水をひとくち飲む。
「それでね、レイさんに返事をするのが五日後で、それまでは通常の訓練に戻るんだ」
「へぇ、そうなんだ」
ペトラは数秒考えてから眉をひそめた。
「……長くない? 五日も要らないよね。ゆっくり考える時間が欲しいとでも言ったの?」
「ううん、違う。五日は、レイさんが最初に言ってきただけ。三日でも七日でもいいとも言われたけれど、何日必要なのかなんて、そのときには考える余裕もなくて」
「ふぅん…。まぁ何日あっても関係ないか。マヤの答えは決まってるもんね」
ペトラはウィンクをしてみせた。