第27章 翔ぶ
「次のチャンスには何がなんでも研究費をもぎ取らないとな、モブリット!」
「そうですね」
モブリットはフォークに突き刺した人参を見つめながら返事をしている。
「ハンジさんたちも大変ですね。研究ってそんなにお金がかかるんですか?」
すべて食べ終わったペトラが訊く。
「あぁ、かかるよ。ここで」
ハンジは自身のこめかみを指さしながら。
「考えているあいだは金は要らないが、いざ実験に移るとなったら材料費が馬鹿にならないからね。たった一度の実験で完成するのならそうでもないが、実際には違う。何度も何度も試行錯誤を繰り返すんだ。そうなると気の遠くなるような資金が必要になるからね。我が友ウィリスの名言にもある “金とアイディアは無尽蔵に湧いて出てきても困らない” とね」
ペトラが首をかしげる。
「ウィリスって? そんな人いましたっけ?」
「あぁ、ペトラは知らないか。ウィリス・キャリアは、技巧科技術班に所属する私の友人だ。マヤには話したことがあるね?」
「はい、憶えてます。対巨人用の武器を開発している方ですよね?」
「そうそう、対特定…、おっとなんでもない」
“対特定目標拘束兵器” の名前を出しかけて、まだエルヴィンにも話を通していないことを思い出したハンジは、慌てて話題を変える。
「……という訳で金とアイディアはいくらでも欲しい。だから日々涙ぐましい努力を積み重ねて少しでも資金源になればと巨人の新薬のみならず、貴族相手のムフフ薬まで開発しているんだ」
「大変ですよね~。ほんと年中お金がない、資金集めだ、そればっかりな気がしますよ」
食事が終わって手持ち無沙汰なペトラは、ぐりぐりとフォークを皿に押しつけながら同意した。
「あれ? マヤ、もう食べないのかい? 手が止まってるよ?」
「ちょっと食欲がなくて…」
「それはいけないね!」
ハンジは途端に心配そうな顔をする。