第27章 翔ぶ
「……苦しんできた顔。リヴァイが?」
「あぁ。レイモンド卿がマヤに好意を持っていることは、招待してきたときから一目瞭然。だからプロポーズの現場に居合わせたとしても、苦しみはしないだろう。だが、リヴァイのあの反応…。恐らくプロポーズ以外の何か…。たとえばマヤが前向きな返事をしたところを聞いてしまったとか、誰ともつきあう気はないと答えていたとか…。何か他の要因が考えられるな」
「なるほど…」
ミケはその薄いあご鬚に無意識に手をやりながら。
「はっきりとしたことはエルヴィンにもわからないのか」
「はは、それはそうだろう。私は王都には行っていないのだから。あくまで推測だ」
「それはそうか。お前のその自信たっぷりの顔を見ていると、すべてお見通しなのかと勘違いしてしまう」
「だといいんだがな…、なかなかそうはいかない。ひとつひとつの状況を判断していくしかない。今のところ言えることは、リヴァイがレイモンド卿のプロポーズ以外の何か情報を掴んでいて、それに苦しめられているということだ」
「ならリヴァイも今日からしばらく、辛い日々だな。レイモンド卿と過ごすマヤを黙って見なければならないのだから」
ミケは同情の声を出した。
「そうだな。ただ…」
エルヴィンは口角を上げた。
「……いつまで黙っているかが問題だが」
「何か行動を起こすと思うか?」
「指をくわえて黙って見ているタイプではないと思うが」
「それもそうだな…」
ミケとエルヴィンは顔を見合わせて笑った。
「この先どうなるかは、お前の言葉によると…」
ミケの言葉をエルヴィンが引き継ぐ。
「……不確定だな。レイモンド卿、マヤ、リヴァイの思惑がどう絡み合うかで決まっていく」
また口角を上げて静かに笑みを浮かべているエルヴィンを団長室に残して、ミケは退室した。