第27章 翔ぶ
「では…。マヤはギータ、ジョニーはダニエルと組め。俺はレイモンド卿の見学について各班長に説明する。タゾロ、班長を集めてくれないか」
「了解」
タゾロが班長を呼びに行き、マヤたちは途中だった準備運動を再開した。
ミケはレイに簡潔に説明する。
「今この訓練場にいるのが俺が分隊長を務める第一分隊だ」
レイが広大な訓練場を見渡すと何人の調査兵がいるだろうか、数十人が充分な間隔をあけて散らばり訓練している。
「調査兵団の組織図としてはだな、団長の下に兵士長。レイモンド卿も面識のあるリヴァイが務める兵士長は、分隊とは別に精鋭を選りすぐった特別作戦班を指揮している。いわゆる “リヴァイ班” だ」
「あぁ、知っているよ。王都でも有名だ」
「そうか。リヴァイ班は少数精鋭の唯一単独チームだが、各分隊は違う。第一から第三まであり、それぞれ四~六人程度の班を十前後抱えている。第一班の班長は各分隊長が兼任。今ここにいるマヤたちは俺の班… 第一班だ。レイモンド卿には第一班を見学してもらう」
「わかった」
レイがうなずいたそのとき、
「分隊長、全員来ました」
訓練場を走りまわって集めた各班長とともに、タゾロが帰ってきた。
「ではレイモンド卿、訓練では思わぬ事故もあり得る。十分な距離を取って見学をお願いしたい」
そして集まった各班の班長に向かい合う。
「諸君、こちらにいるのは…」
皆、貴族など初めて見る者ばかりだ。
各班長はミケによるレイの見学の説明を聞きながら、ぼうっとその容姿に見惚れている。
仕立ての良い白いスーツの上下、真っ白の革靴。煌めく銀髪に口元からこぼれる白い歯。
ミケの説明が終わり、各自持ち場に戻れと命じられても班長… 特に女性の班長はしばらくその場から動けないほどだった。
レイは “邪魔をする気はない” の言葉どおりに、少し離れたところで静かに見学を終えた。訓練に没頭したマヤたちが、いつしかその存在を忘れたくらいだ。
……これから、どうなるの? まさかこのまま一緒に執務室へ?
そして訓練が終了した今、マヤはミケとレイの背中を見ながら歩いている。