第26章 翡翠の誘惑
神妙な顔をして慎重にイヤリングのネジを緩めたマヤ。
それを真横で見守っているペトラは、あらためてため息をつく。
「こうやって見るとその宝石…、アクアマリンだっけ。めちゃくちゃ大きい。きっとものすごく高価なんだろうね」
ネジを緩め終えたマヤが、ペトラの首飾りに視線を送る。
「ペトラのペンダントの石も大きいよ? 一緒くらいじゃない?」
「そうだけど…」
自身の胸元のしずく型にカットされているインペリアルトパーズをさわってみるペトラ。
「同じ大きさの石なら胸のところより、耳にぶら下がってた方が目立つよね。両耳だから二つだし…。首飾りより耳飾りの方が良かったなぁ…」
どうやらペトラは、両耳に大きな宝石を揺らしているマヤの耳飾りがうらやましくなったようだ。少々元気がない。
「ペトラの石もすごく目立ってるよ! 確かに私のは二つだけど、ペトラのは色が濃いから一つでもすごい存在感だよ」
「……そう?」
「うん。それにやっぱりレイさんが選んでくれた石だもの。ペトラに似合ってる! ……ねぇ、オルオ?」
急に話を振られてオルオはびくっと肩を震わせたが、すぐに相槌を打った。
「あぁ、うん。よくわかんねぇけど、マヤの薄い水色の石より、それくらいはっきりと濃いオレンジ色の方がペトラに合ってるんじゃね?」
「そっか。なんかそんな気もしてきたかな…?」
ペトラが少し元気を取り戻す。
「そうよ。レイさんが私たちそれぞれに似合うのを考えてくれたんだから、ペトラはその石、私はこの石がぴったりなんだってば。ねぇ、兵長もそう思いますよね?」
ペトラをもっと励まそうと、マヤはリヴァイにも話を振った。
「……あぁ」
ひとことで返したリヴァイだったが、その内心はますます乱れていた。
マヤが何度も “レイさんが選んでくれた” と口にしたからだ。
「オルオはともかく兵長がそう思うんだったらそうだよね! なんかあまりにもマヤの耳飾りが綺麗だからうらやましくなっちゃって。ごめん」
「いいよ。私だってペトラがうらやましいくらいに綺麗に見えるよ」
「ほんと?」
「ほんとほんと」
マヤとペトラはリヴァイとオルオの存在をすっかり忘れて、二人でいつまでも話をつづけた。