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【リヴァイ】比翼の鳥 初恋夢物語【進撃の巨人】

第26章 翡翠の誘惑


不可思議な光景に吸い寄せられるようにテーブルに近づく。

書類の山は三つ。

そのどれもが、マヤが手伝う性質のものだ。

………!

自分でも訳がわからないが、テーブルの向こうにまわりソファに腰をかけた。

……これは兵長が、この書類を片づけておけと置いたんだわ。

そうに違いない。

別に置手紙がある訳でもない。事前に口頭で指示されていた訳でもない。

なのに、どうしてだろう。

マヤには確信に近い何かがあった。

……兵長からのメッセージだ。

俺が留守でも、執務をいつもどおりにやっておいてくれと。

その想いが胸を突き抜けていく。

マヤは三つに分類された書類をざっと見て優先順位を決めると、一心不乱に取りかかった。





サラサラとペンを走らせる音と、紙をめくる音だけがしている執務室で、マヤはひとり執務をつづけた。

7月で夕方でも明るかった室内だが、執務に没頭しているうちに気づけば日も暮れ薄暗い。

そのことに気づいて、ぱちぱちとまばたきをした。

「……ランプ… どうしよう」

ランプをつけてまで執務の手伝いを勝手につづけるか、ここを区切りにやめるか。

与えられた… とマヤが考えている執務はほとんど終わった。残りは根気を入れて取り組めば十五分もあれば片づくであろう。

……多分もう、兵長は帰ってこないわ。ピクシス司令と飲んでるんだもの。

それならば兵長が帰ってきてこのテーブルの上を見たときに、全部終わらせたのかと驚かせたい。

「よしっ! 頑張ろうっと!」

マヤはこのまま執務をつづけると決断して、ランプに灯をともそうと立ち上がりながら声を出した。

ちょうど同じタイミングで出し抜けに扉がひらいた。

「……でけぇ独り言だな」

振り向くとリヴァイが頬のあたりに、かすかな笑みのようなものを浮かべて入ってきた。

「兵長!」

帰ってくるとは全く思っていなかったマヤの声が、驚きで裏返る。

でもそれは嬉しい驚き。

すぐに満開の花咲くような笑顔を向けて。

「おかえりなさい!」

「あぁ…、ただいま」

挨拶を返したリヴァイの声は、帰るべき場所に帰ってきたかのような。

そんな落ち着いた感じの声だった。


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