ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第29章 Perfect Crime
ネックレスを着けてくれたアッシュは再びベッドに腰掛けて、すぐ隣をポンと叩いた。促されるままに私はアッシュの隣に座る。
「あの金、あったろ?」
『“ドロボウ”した?』
「ああ、あの金でマンションを買った」
アッシュは、オーサーがここを見つけ出すのも時間の問題だから秘密裏にそこへ移り次の行動を始めると話してくれた。そしてなんとゴルツィネは今、市警をも動かしアッシュと私を血眼で探しているらしい。…不必要に外へ出るなと言われていた理由はそのためだったんだ。
「次にオーサーが有利な状態でお前と遭遇すれば、ヤツはきっとどんな手を使ってもお前を逃がさないはずだ。だから、出来る限り人の目に触れない安全な場所にいてほしかった。…俺は決してお前を邪魔だと思ってここに閉じ込めたわけじゃない、分かってくれるか?」
『…うん、ごめん』
「いや、お前には話せばよかったんだ最初から。ただいたずらに不安を煽りたくなくて…」
アッシュのこういう優しいところも私は…。
だからこそ、今伝えておきたい。
『ねえアッシュ』
「ん?」
『私ね、アッシュのためなら死んだっていいよ?』
「…何バカなこと言ってんだよ」
『聞いて?私ふざけてない、本当にアッシュの役に立って死ねるんだったら喜んで死ねる。もちろん、犬死にしたいわけじゃないよ…私にしか出来ないこと、きっとたくさんあるはずだから…私も役割を果たしたい。お願い、アッシュの作戦に私も加えて?』
「…っ…どうして」
『え?』
「どうしてお前、俺のために死ねるなんて…」
『昔から、アッシュはずっと私を守ってくれたでしょ?こんな私のために、色々なものを犠牲にして…ずっとそばにいてくれた』
私はそんなアッシュのことがずっと大好きで、
『…私も、ずっと守りたいって思ってた』
「……」
『私だってちゃんと命を懸けたい、リンクスの一員として……大切なボスのために』
アッシュはひどく動揺したように目を泳がせた。
…困らせてごめんね、でも危険であればあるほど自分だけが蚊帳の外にいることが許せないんだ。
私は服をめくり、自分にナイフを突き立てた際の傷を見せた。
『私…本気だよ、アッシュ』
「………わかった」