ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第29章 Perfect Crime
《アッシュside》
俺はユウコの使う隣の部屋へ向かった。
先に入りベッドへ腰掛けると、無言で着いてきたユウコがドアを閉めた。
『…大丈夫だった?』
「ああ、なんとかな」
『そっか、ここを出るって言うのは?』
「別のとこへ拠点を移すのさ」
『……そう』
「どうした?」
『…なにが?』
「なにが、じゃないだろ」
明らかにユウコの様子はおかしくて、何かを不満に感じているような雰囲気だった。
「…言えよ」
『いいの?』
「なにが」
『なにが、じゃないよ…言ってもいいの?私の話、聞いてくれるの?』
その瞬間、俺はこいつの言わんとすることを理解した。
「……一応、聞いてやる」
『ねえアッシュ、私に何を隠してるの?』
「…別に、なんも隠してねえよ」
『嘘。アッシュに私の考えてることが分かるように、私にだってアッシュの考えてることが分かるんだよ』
「……」
『教えてよ、今のこと…これからのこと…』
顔を見なくたって、今ユウコがどんな表情をしているかなんて手に取るようにわかる。こいつの心の内だって、なんだって。
『お願い、アッシュ』
「…危険なんだ、今は」
『そんなの昔からずっとそうだった』
「それ以上にだ」
『私だって役に立ちたい』
「もう充分さ」
ここまで言っても珍しくユウコは折れずに俺と向き合った。
『…いつもそう、危険だからって私だけひとりにする』
「そんなことないだろ」
『あるよ。最近リンクスのメンバーはみんな忙しそうにしてるのに、誰に聞いても下手な芝居で誤魔化そうとして…私だってリンクスの一員だよ?それとも本当は私、リンクスのメンバーなんかじゃなかった?』
「今さらバカ言うなよ、お前なしでリンクスなんてありえねえ」
『だったら!』
「今はそれぞれにやるべきことがある、それはお前だって同じだろ?」
『…ここに引きこもって何もせずにコーヒーを飲んでることが、リンクスのメンバーとしての私のやるべきことなの?』
「お前…」
『どうせアッシュは私のことなんて、邪魔なお荷物としか思ってないんでしょ』
「ハァ…どうしたんだよ?お前、一旦落ち着け」
『めんどくさそうにしないでよ!
…もういい、そうやって何も話してくれないなら私だって勝手に動くから』