ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第25章 友よ
ギギギ、とこの屋敷内では珍しく手入れをされていない古びた扉が開く。部屋の中を見るのは恐らく初めてだった。
『………っ、』
扉の前で足を止めた私たちを銃でグイッと押しやり、背後で扉が閉まった。
中へ入ると、段取りが組まれていたかのようにロボさんとイベさんは鎖で柱に拘束された。そしてアッシュは手首にカシャンと手枷をはめられている。
「……ッハハ、いよいよだな」
そう言ったオーサーがレバーを引くと、ガラガラと音を立ててアッシュは両手が上がる形で拘束されてしまった。
私は依然として手足は自由なまま、数人の男たちに銃を突きつけられる。
「…いいザマだな、アッシュ」
「……」
「ここは知ってるだろう?パパ・ディノの“処刑室”だ。まさか自分が繋がれることになるとは思いもしなかったろうな」
「…ふん、」
「相変わらずだな、だが…いつまでつっぱっていられるか」
オーサーの手に握られるナイフがカチャカチャと音を立て、アッシュのリボンタイを捕える。そしてそれを勢いよく切り払った。
「…っ」
アッシュの首から血が流れ出す。それでもアッシュは表情を変えずに、むしろ余裕そうに微笑んだ。
「ふん、お前はいたぶりがいがねえ。なにしろ可愛げのないことにかけては超一流だからな…」
「お互い様だな」
「…だが何故かなァ、わかっちゃいてもお前のツラを見るといたぶってやりたくてたまらなくなる…」
「変態だからだろ」
「…ふっ、ハハ!いい調子だアッシュ、その鼻息を忘れるなよ。…おいユウコ」
『……』
「そろそろ覚悟を決めておけよ、お前は逃げられない」
足音が聞こえて目を向けると、そこにはグリフィンを撃ったあの男がいた。私が睨みつけると、驚いたような顔をして「あの時の女か」と笑った。
「エイブリー!」
「…やあ兄さん、まあ見ててくれよ!僕はあんたがビビって手を引いたあれを1人で成功させたんだ!」
「お前は…自分が何をしてるか分かってるのか!」
「これは偉大な事業なんだ!第一…」
「余計なことを言うんじゃあない!」
ディノの怒りを含んだ声が上から響き渡る。
「さっさと始めろ。客の前で私に恥をかかせるようなマネはするなよ」