ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第22章 不仕合せのlove bite
『……………』
「なんだ、急に大人しくなったじゃねえか」
オーサーの手が、舌が、身体の至るところを這う。
昔は平気だったはずなのに、おかしいな。こんな行為普通だったのに、今はどうしたんだろう。すごく気持ち悪い。胸が痛くて、いやだ。辛い、悲しい、悔しい…。
ほんとうに、悔しくて悔しくて堪らない。
気を抜くと泣きそうになる気持ちをなんとか抑えて、私は唇を噛んだ。
指が、中に押し込まれる。
『………、』
痛い…っ
あまりの痛みに眉がピクリと動く。
まずいな…どうしよう。
全然濡れてない。
「…キツいな」
このままじゃもっと痛い思いをすることになる。頭で必死にアッシュを思い浮かべるのに、この行為と全く重なってくれない。
カチャカチャとベルトを外す音が聞こえる。そしてクチクチとオーサーが自身を扱く音が響く。
「いよいよだ」
そう言って私の足をグッと掴み広げた。
そして、固くなったモノが宛てがわれる。
『…………っ』
嫌だ、嫌だ…悲鳴をあげてしまいそうになる。
だめだ、耐えろ…耐えろ…っ!
滑りが悪く入っていかない自身に、唾を吐いた。
再びクチクチという音がしたかと思うとズンッという衝撃が下半身に走る。
『…ぅ……っ!』
「…っ…ふ、あったけーな」
肌がぶつかる衝撃で漏れ出る呻き声を、私は必死に殺した。
これはアッシュ…私はアッシュとしてるんだ、なんとかそう思い込もうとする。
でも声や、吐息、激しく突き立ててくる自分本位なセックス…こんなのアッシュじゃない。それが嫌という程に伝わってくる。
アッシュじゃない、そう実感すればするだけ涙が出そうで辛くて苦しくなった。
昔はアッシュ以外とすることなんて珍しくもなかったじゃないか。なのにどうしたんだよ、私。なんでいちいちこんなに傷ついてるんだよ。そんなことを考えて、納得する答えに辿り着いた。
…ああ、他の人との行為が苦しくなるほどに、私はアッシュのことを好きになってしまったんだ。
アッシュとこの行為をすることはもう二度とないのに、求められることなどありえないのに、報われないことなどわかっていたのに。
バカだな…。
自分がひどく滑稽で哀れになる。
肌のぶつかり合う音が響く
『…………』
必死に表情を変えず声も漏らさず、ただ早く終われと祈っていた。