ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第20章 Los Angeles
《アッシュside》
「…この解毒剤は、たいていの筋肉弛緩剤に効果がある。しかしこれは科学物質じゃないな…植物かなにか自然物から直接生成したものらしい」
「中国5千年の秘伝…ってわけか」
「しかしだとしたら見事なものだ、是非処方をききたいものだな」
「聞けばいいだろう、あんたの“息子”のしわざなんだからな」
「何?私には息子などおらん」
「わかってるさ。俺たちが聞きたいのは“バナナフィッシュ”のことだ!」
「!」
「あれはあんたの作ったものだな…アレクシス・ドースン博士!!」
「…お前は、お前たちは一体何者だ…?弟の仲間か?」
「俺の兄貴はあんたの作ったあの薬で…10年前イラクであの薬を飲まされて…っ!10年間狂ったまま…廃人同様のまま…あんたの弟に撃ち殺されたんだ!」
「な…なに?」
「そいつがヤクにやられた時…俺はその時その場にいた。一緒の隊でな…ヤツは俺の親友だった。俺たちには話を聞く権利がある」
「……」
「おいっ!!」
黙りこくったジジイの胸ぐらを掴み上げる。
「俺はこんなとこでグズグズしてらんねェんだ!!」
「お…おい、アッシュ」
「あんたの弟が組んでる連中が、俺の仲間をかっさらっていきやがったんだからな!!」
「…な、なんだって……わかった、着いてきなさい」
たどり着いたのは、とある部屋だった。
「…あんたは今までどこにいたんだ?どうして急に出てきた」
「ここ2、3ヶ月の間、妙な男たちに付き纏われてな…おそらく弟の仲間なのだろうが、生命の危機を感じた。それでずっとサンタモニカの貸別荘にいたんだ。だが、誰かが私のコンピューターのシステムに入り込んだのがわかった…私はてっきり弟が戻ってきたのかと思ったんだが…」
「俺がやったんだ、あんたの書斎の端末機で」
「お前さんが?」
「…けど、あんたがシステムを閉鎖したから全部は引き出せなかった」
「残念だが、あれはダミーだ。ロクな情報は入力してない。弟と組んでいるのなら、とっくにわかっているようなことばかりだ」
そういって本棚の隠しボタンを押すと、ズズズ…と音を立てて本棚が動き出した。