ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
『…んッ、ア……スラ、ン…』
「………ユウコ……っ」
アスランの熱が私に触れた時
ボタボタ、と顔に水滴が降ってきた。
「……………ごめん」
うわごとみたいに名前を呼ぶしかできないくらいの意識の中で、アスランの「ごめん」という言葉が鮮明に聞こえた。
その直後
ズ、プ…ッ
『…ッ…い゛…だ…ぁ!!!!』
パァンと頭の中で何かが弾けたようだった。
強烈な痛みと圧迫感に涙が溢れる。
痛い…、痛い…!!
『…うっ…ひ、ぐ…ッいだ…ぃ…』
「…っ…ご………め、ん」
ギュウ、ときつく抱き締められたかと思うと突然目を刺すような眩しさを感じた。
『………ッ…』
開けられない。
眩しさはもちろん、涙が固まってまつ毛がくっついてしまっていた。
「…っ…ユウコ、」
生暖かい感触がして、舐められていると分かった。
目を開けると、涙を流すアスランと視線が合った。
『…あ……ぁ、』
久しぶりのアスランの姿。
嬉しくて、嬉しくて仕方ない。
「…っ!…ッうぁ……ちから、ぬい…て」
違和感のある下半身に目をやる。
私たちの体はピッタリと密着していた。
セックスしてる
私、今アスランと痛いことしてるんだ
『…ぅ…っ、う…』
これが、アスランが耐えてきた痛み。
アスランと同じ痛み。
やっとわかってあげられた。
そう思うと更に涙が溢れ出てくる。
「ぁ…っ、ごめん…っごめん、ね…」
時々眉を寄せて苦しそうに呼吸しながら、アスランは何度も何度も私にごめんと言った。
泣かないで、アスラン
アスランと同じ痛みなら耐えられる…
これに耐えることがアスランの為に生きていることになるのなら、どれだけでも耐えられる。
ーーそう思っていたのに、
すぐにこの痛みは消えていった。