ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
《アスランside》
『…ごめ、んね…?』
「どうして、ユウコが謝るの…?」
『…アスラン、悲しそうな顔をしてるから…』
「…っ……ユウコ…」
『わた、しが…悲しい顔させちゃっ…』
「……っ!」
僕はユウコを強く抱き締めた。
「…ごめ…っ、ん…ぼく…1番つらい思いをしたのはユウコなのに…っ…ごめん…」
首にユウコの腕が回る。薄いシャツ越しに燃えるような体温が伝わってくる。僕の首筋に顔を埋めているユウコが何度も深呼吸を繰り返す。
『……っ、ア…ス…』
「…ユウコ…」
『…アスランの…匂い…だ…』
切られて短くなった部分を撫でると、いつもとの違和感に涙が出そうになる。
ごめんね…守ってあげられなくて…
怖い思いをさせて、ごめん…
『…っは…ぁ…はぁ…』
「…大丈夫?ユウコ」
『……っ、ん…』
ユウコは突然足を擦り合わせて立ち上がろうとした。力が入らなくてガクンと僕にもたれ掛かる。
『…っあ…ぅ』
「どうしたの?……あっ、」
そういえば、さっきシャツが濡れて…それにそこに転がっているペットボトル…ユウコはもしかして。
僕はベッドからリードを外しユウコを抱き上げ、トイレに走る。
トイレについてユウコを降ろし座らせる。
『…っはあ…はあ…』
「じゃあ僕戻ってるからね」
背を向けようとするとユウコは僕のシャツを掴んで離さない。
『いっちゃ…やだ』
「…え…」
手が震えてギリギリのところでどうしようか悩んでいるように見えた。
「ユウコ…大丈夫だよ、すぐそこにいるから…終わったら呼んで?」
『……っん』
手がシャツから離れたのを確認して、僕はドアの外に出た。
しばらくして中から僕を呼ぶ声がする。
再び抱えてベッドに戻るとディノが帰ってきた。
お医者さんがきたから、僕は待ってるように言われたけどユウコが離れなかったので一緒についていくことになった。