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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第1章 ケープコッド




この地に来て一番古い記憶の私は、鏡を見る度にどうして自分の髪や瞳は周りの人と違うんだろうと不思議だった。
夜のような闇色が怖くて、よく1人で泣いた。


記憶とは実に曖昧なもので、
1日を1ヶ月を1年を過ごしていくと当たり前のように上書きされて、不思議や恐怖も感じなくなっていった。
ここに来る前に話していた言葉を、1から新しい言葉に変えるのもそう時間は掛からなかったと思う。



色々忘れてしまった私は、時々自分に問いかける。


初めて「パパ」と「ママ」の顔を見た時はどうだった?
初めて乗る飛行機はどうだった?
初めてケープコッドの空気を吸った時はどうだった?


「お父さん」と「お母さん」が死んだ時は…










「ユウコ?どうしたの?ボーッとしてる!」


ハッとして顔を上げる
ふわっとしたブロンドヘア、グリーンアイの男の子に覗き込まれていた。


『あっ…ごめんね!なんでもない』

ニコッと取り繕うように笑うと、近所に住む7歳で同い年の彼は隣に並ぶ自分のブランコに戻って漕ぎ始めた。


「ねぇ、どこまできいてた?野球の話はつまらなかったよね…」

『そんなことないよ!いっぱい野球教えてもらってるんでしょ?この前パパと、アスランが練習してるところ見たよ。アスラン上手だってパパが言ってた!』

「うん、コーチがね、すごいんだ!僕最初は全然バットに当たらなかったのに、今は打ったボール探すの大変なくらいなんだよ!」


アスランは褒められて少し照れたように、頬をかきながら話す。
彼は私がこっちの国に来て初めて出来た友達でほぼ毎日公園のブランコで話をしながら遊んでいた。
私のいた国でよく遊んでいたブランコを真似して、簡易的に作ってくれたのは私とアスランのパパだった。




私がケープコッドにきたのは、4歳の時。

3歳の時に生まれた国で両親を事故で亡くした私は孤児院に預けられた。
それから1年後子供に恵まれなかった今の両親の元に養子に入ることになった。

海外から養子に入ることは、とても大変だったらしいけどパパとママはたくさん熱意を伝えてユウコと親子になることを認めてもらえたんだよといつも嬉しそうに話してくれた。

私はパパとママに愛されて、とても幸せだった。


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