ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第13章 地獄の中へ
いやだ、嫌だ…
裸になるたびにマービンたちは私の胸を触ってくる。
最初は触るだけだったのに、撫でながら先の方を指で挟んだり、爪でひっかいたりするようになった。その度にビクッと体が震える。
体が勝手に動いて恥ずかしい…
辛くて泣きそうな時はアスランとの約束を思い出す。アスランのために、と思うと涙をこらえられた。
「…ユウコ」
名前を呼ばれたと同時に手を握られる。
だけどマービンのいやな視線はずっと向けられている。見られたくない…助けて…、アスランの胸に飛びついた。温かい体温とアスランのにおい、それと私の中に響くくらいの心臓の音を感じた。
ダイジョウブ、
僕たちは今一緒にいる、
…僕のために生きてくれる?
『…っ』
あの日の言葉が浮かぶ。
とても嬉しかった。
真っ暗闇に突然光が差したようだった。
彼が私のために生きるということは、アスランのこの心臓は私のために動き続けているということ…そう思うとたまらなく安心する。
そのとき、頭上から名前を呼ばれた。
見上げるとアスランは私の目を見つめてこくんと唾を飲んだ。そして、ゆっくり私の唇に視線を移すと親指で撫でられる。
繋がっている手に少し力を入れるとアスランも返してくれた。
唇をじっと見られ、ドキドキする。
つられるように私も指でアスランの唇に触れた。
ーーキスしたい、
命令されるよりも前に…
今日は強くそう感じる。
…アスランの「ごめんね」はききたくない
私は唇に触れていた指でアスランのもう片方の手を握り、はじめて自分から彼にキスをした。