第4章 スカウト
高校卒業後、両親の許可を得て、奏と同居することになった。
『出久と同居出来るなんて幸せ!出久、なんか歌おう!』
「そうだね!僕もたくさん歌いたい気分だよ!」
防音性能付きの壁で出来たアパートと賃貸なので、歌っても大丈夫だろう。
そんな時にインターフォンが鳴った。
扉を開けると、彼女と僕のお母さんだった。
「こんな手紙が来たから、直接渡しておこうって思って……」
その手紙は、僕と彼女の実家にそれぞれ来ていたらしい。
手紙が入った封筒には、よく聞いたことがある『ドリーム事務所』からだった。
「えっと……あなた方の歌声に心を打たれました。是非とも、私達の事務所においで下さいませ。きっと、あなた方が幸せになれるでしょう、だって」
僕が読んでみると、彼女は固まってしまった。
『出久、私達……』
「奏、どうする?せっかくここまで来たんだから、行こうよ」
僕らがテレビに出れるかもしれないのだ。
たくさん歌えるのだ。
「更に向こうへ、行こうよ」
『……うん』
僕の言葉を聞いて、彼女は真剣な顔で頷いてくれた。