• テキストサイズ

文スト夢短篇集

第1章 いのち短し恋せよ乙女


私は今、恋人と旅行に来ている。なんとそれも海外、憧れの欧州!日本から遥々十数時間、降り立ったのはイタリアのヴェネツィアだ。ポートマフィアの首領専属秘書である私は、なんとか首領から有給を貰い1週間程バカンスにやって来た。

職場恋愛というには殺伐とした職場故に、私達は首領にさえ秘密の恋人同士だった。今回の旅行だって、彼が有給を取ったり、休みの丸被りを偽装するために涙ぐましい努力もしなければならなかった。なので、実際彼とここで過ごせるのは数日しか無いのだが、それでも私には充分な時間だ。

そしてその、私の恋人というのは、ポートマフィア首領直属遊撃隊所属にして死神と恐れられるあの、芥川龍之介だ。彼の実際の仕事ぶりを目の当たりにする事はないのだが、少なくとも軍警に指名手配されるという事や、首領の秘書として彼から報告を聞く限り、私の恋人は強い。

しかし今、日本のヨコハマで恐れられているこのポートマフィアも、ファースト・クラスに座っていたにも関わらず、この異国イタリアのヴェネツィアの地で、十数時間の缶詰状態によるエコノミークラス症候群と極度の時差ボケに苦しんでいた。

「龍之介、大丈夫?エコノミークラス症候群には水分補給が大事だから、これ飲んで?」

そう言って買ってきたミネラルウォーターを差し出す。
「なんの…、これしきのことで…、僕が…。」
彼はそう言って、私の手を遮った。それでも、とりあえず彼の手にペットボトルを持たせることにした。いつもなら絶対に受け取らないであろう彼は、すんなりペットボトルを受け取った。
/ 32ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp